2025.11.25 議会改革
【セミナーレポート】「全国地方議会サミット2025」(Day1・Day2)
2025年11月8日(土)・9日(日)、ローカル・マニフェスト推進連盟主催による「全国地方議会サミット2025」が、法政大学(東京都千代田区)およびオンラインのハイブリッド形式で開催されました。2日間の講演およびセッションの内容をレポートします。
(Day1)基調講演「『炎上の時代』の政治コミュニケーション」
最初に、法政大学法学部政治学科 教授の廣瀬 克哉氏より現代のネット空間と政治コミュニケーションの関係について講演がありました。
廣瀬氏は、近年の選挙でSNSが結果に影響を与える事例や、地方議会でYouTuberがトップ当選する例を紹介しました。SNSでは炎上が自動的に拡散され、フィルターバブルにより好みの情報だけに触れやすい環境が生まれています。認識のずれを避けるため、発信は必ず“特定の誰か”を想定することが重要です。政策や価値観は丁寧な対話で築き、炎上は“観衆”に向けて発信すべきだと指摘しました。
(Day1)SNSと地方議会「『民意』はどうできていくのか? SNSの影響と地方議会の方向性」
本セッションでは、SNSが政治情報の流通や認識にどのような影響を与えているかについて、実証データや分析をもとに議論が行われました。
◆米重 克洋 氏(JX通信社 代表取締役)
「インフレとメディアシフトが起こす日本政治の地殻変動」
米重克洋氏(JX通信社)は、若年層を中心に情報源がテレビからネットへシフトしている現状を指摘し、YouTubeなど動画プラットフォームの影響で、ネット上で対立的・感情的な言説が広まりやすくなっていると説明しました。選挙ではSNS発信力が支持に直結する例もあり、インフレや政党支持の変動など、政治環境の変化とSNSの構造的影響の関連も解説しました。
◆大森 翔子 氏(法政大学社会学部メディア社会学科 准教授)
「SNSが有権者に与える影響」
大森氏は、有権者の多くは政治家のSNSを積極的にフォローせず、政治情報は偶然・断片的に流入すると指摘しました。また、対立やスキャンダルを強調するSNSの傾向が政治不信や社会分断を招きやすいため、地方議会は政策フレームを軸にリアルとオンライン双方で丁寧な対話を継続すべきだと述べました。質疑では地域情報の発信方法やオピニオンリーダーとの関係が議論されました。
(Day1)AIと地方議会「活性化?不要?AIで議会・議員はどう変わる? 世界と日本の今と未来」
AIの急速な普及が、地方議会の運営や議員の役割にどのような変化をもたらすかについて、海外事例も交えながら議論が行われました。
◆高 選圭 氏(福島学院大学 地域マネジメント学科 教授)
「AI時代の地方議会の変化と課題」
高氏は、韓国や北欧など14カ国の事例を紹介し、AIが議会運営に与える影響を解説しました。韓国・京畿道議会では条例作成や住民資料、効果分析までAIが支援し、議員の効率化と質向上に寄与しています。済州島やUAEの事例も示され、AIは単なる効率化ではなく、行政情報の開放や市民参加を支える議会運営の哲学と結びつくと指摘しました。
◆河村 和徳 氏(拓殖大学政経学部 教授)
「世界と日本の今と未来」
河村氏は、日本の地方議会の制度的特徴からAI導入の課題を分析しました。議会は政党中心でないため個々の議員に依存しやすく、執行部主導の体制では予算や人員の確保も課題です。AIで単純業務は縮小する一方、判断や熟議など人間固有の役割が重要になります。また、効率性だけでなく多様性を担保する制度設計やデジタル・インクルージョンの視点が不可欠だと指摘しました。
(Day1)議会改革のトレンド「議会改革のトレンドと注目議会 ~地域経営のための議会改革度調査から~」
◆山内 健輔 氏(早稲田大学デモクラシー創造研究所 招聘研究員)
山内氏は、議会改革度調査をもとに、全国の地方議会で進む取り組みを紹介しました。生成AI導入、議会報告会の改善、シティズンシップ教育の推進、無投票対策など、住民と向き合う新しい方法が広がっている現状を報告。優れた事例を積極的に取り入れる「TTP」の姿勢で、学びを各議会の実践につなげる重要性を強調しました。
