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2025.11.25 政策研究

第68回 多元性(その2):機関間関係

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 前回(第67回=2025年10月27日号)において、自治体は政府の一種として、地域内外・国内外の他の多数の政府と政府間関係を構成していることを述べた。では、自治体とは単一の存在なのかというと、実はそうではない。自治体という「地方公共団体」は、団体又は法人として、様々な機関を持っている。つまり、単一の自治体なるものは、多数の機関間関係からなる組織なのである。
 その点からすれば、政府間関係とは、実態においては機関間関係でもある。例えば、国と都道府県の政府間関係といっても、国とか都道府県とかいう団体そのものが一体のもの同士として関係を取り持つのではなく、国の○○省□□局△△課と都道府県庁の●●部■■課とのそれぞれの関係ということが実態である。ということは、政府間関係といっても、団体対団体の一対一の関係に集約・統合されているのではなく、多数の機関間関係の雑多な集合体又は羅列・並列ということになる。こうした状況は、しばしば、「縦割り」とか「円筒型行政」などと称されてきた。
 なお、組織とは何であるか、組織や団体の機関とは何であるかについては、連載=第58回(2025年1月27日号「組織性(その4):団体・法人・身体・機関」)でも触れたところなので、重複する点につきご容赦をいただくとともに、併せて参照してくださると幸いである。

執行機関と議事機関

 自治法制では、自治体という団体の多数の機関は、第一義的には、執行機関(地方自治法第2編第7章)と議事機関(地方自治法89条)として整理・分類されている。議事機関とは、要するに自治体議会(1)のことである。執行機関には、長、委員会、委員があるとされる。法制上の「地方公共団体の長」とは、一般には、あるいは、本連載でも「首長」と称されている。端的には、都道府県知事、市区町村長のことである。執行機関としての委員会は、教育委員会、公安委員会、選挙管理委員会などの各種「委員会」である。
 執行機関と議事機関という2種類の機関が存在するため、「機関対立主義」などということがある。非常に曖昧にいえば、国における行政府(内閣)と立法府(国会)の対比に似ているので、自治体レベルでの立法・行政の権力分立制ということもできる。もっとも、国レベルでは議院内閣制なので、国会(特に衆議院)に対する内閣(首相)の単純多数決に基づく信任が必須であるが、自治体レベルではアメリカ型大統領制的なので、首長は議会の単純多数決よる信任を必要としてない。とはいえ、予算については、議会の議決が不可欠なところは、国と自治体とは同じである。
 執行機関と議事機関から構成されるという意味では、多元性というよりは二元性といった方がよいだろう。もっとも、上記のように、執行機関は3タイプで、多数の機関があるから、その意味では多元性を構成しているといえる。

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