これからの議会基本条例「制定」への示唆
過去5回の掲載を踏まえて、これから議会基本条例の制定を考えている議会に対し、本特集から得られる示唆を述べたい。それは5点ある。
第1に、これまで何度か指摘しているが、議会基本条例には独自性や地域性が求められるべきと考える。例えば、地域の文化や理念を議会基本条例に反映させる必要性があるだろう。これは、紋切型議会基本条例からの脱却となる(「前文」ぐらいは独自性や地域性を出した方がよいと考えるが、前文も紋切型のケースが存在する)。
第2に、議会基本条例は議会改革のエンジンとなるべきである。議会改革は議会単独で行う時代ではない。議会改革の方法論は進化すべきである。具体的な方法論は、全議員参加、住民との共創、大学連携(学術連携)などがキーワードとして挙がる(「全議員参加」であり「全議員一致」ではないため、注意が必要である)。
第3に、議会基本条例には、住民参加をいかに制度化するかが求められる。例えば、意見交換会(議会報告会)、議長への手紙、議会サポーターなど多様なチャンネルを用意する必要がある。議会改革に住民の意向を踏まえることが大事である。特に、サイレントマジョリティ(ものいわぬ多数派)の価値観をどのように反映させていくかがポイントと考える。この仕組みを議会基本条例に書き込むとよいだろう。
第4に、これからの議会基本条例は「主権者教育」も重要な要素になるだろう。子ども議会や若者議会を通じた「政治に参加する」という意識の醸成が必要である。
やや話がそれるが、読者は「小学生がなりたい職業」に関し、議員は何位であると思うか。全60職ある。解答は【 】位である(学研総合研究所「小学生白書」(2024年11月調査))。解答は本稿の最後にある。
順位が低い理由は、いろいろと考えられるだろう。その中で筆者は、「議員は遠い存在」であることに要因があると推察している。大学のキャリアデザインの科目で、多種多様な仕事の紹介があるが、「議員」は少ない。議員が仕事の一つとして選択されていない状況があるのではないか。筆者の教え子(卒業生)のうち2人が議員になっている。彼らは学生時代から議員と接点があった。そのため議員を身近に感じ、議員の仕事に魅力を感じていた。主権者教育の一環として、小学校の総合的な学習の時間を利用して議員が出向き、「議員の魅力」というテーマで教えることも一案である。
第5に、デジタル時代の議会像を模索する必要がある。この「デジタル時代の議会像」は先進事例が少ない(ほとんどない)。読者が議員ならば、読者の発想次第で新しい議会を形成できる。議会基本条例に、ICTやAIの導入、オンライン化(オンライン議会)、さらには、デジタル技術を活用した情報公開を推進し、住民の信頼を得て、住民と共創していく議会に変貌する必要があるだろう。
