2025.11.25 政策研究
第28回 「地方創生」の現状と課題
地方創生の展開と評価
地方創生についての大きな議論のトリガーは、先述したように2013年の増田レポートにあるといえますが、国もその後の「経済財政運営と改革の基本方針2014」(骨太の方針2014)策定や地方創生担当大臣の任命、そして2014年11月の「まち・ひと・しごと創生法」の制定と「まち・ひと・しごと創生本部」の設置等、地方創生に注力してきました。そして、国は「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と「総合戦略」を定め、自ら「総合戦略」を実施するとともに、自治体には「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を定め「地方版総合戦略」を実施することを要請しました。
全国の都道府県・市区町村は、第1期から第3期まで「地方版総合戦略」を策定(第3期「地方版総合戦略」は、2024年4月1日現在で1,788(47都道府県・1,741市区町村)団体中1,786団体で策定)し(内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局 2024:2)、各自治体が地域特性に応じた戦略を展開しています。第1期地方版総合戦略(2015年度〜2019年度)においては、東京一極集中の是正、人口減少対策、地域活性化が内容の中心となっています。第2期地方版総合戦略(2020年度~2024年度)では、第1期の成果と課題を踏まえつつ、「関係人口」の創出や地域資源の活用に特徴がありました。また、多くの自治体が総合計画と総合戦略を連動させています。第3期地方版総合戦略(2025年度~2029年度)では、国の「デジタル田園都市国家構想」や地域のDX推進等による地方創生の加速を目指しているところが多くなっています。
なお、地方創生に関する国から自治体への「地方創生推進交付金」の交付は、2016年度から始まり、2022年度以降は「デジタル田園都市国家構想交付金」が創設され、2024年度補正予算で「新しい地方経済・生活環境創生交付金」が創設(名称変更)されています。
地方創生に求められるイノベーション(革新)
ここでは、地方創生に求められるイノベーション(革新)について考えます。自治体改革である地方創生にはイノベーションが必要ですが、ではイノベーションには、どのようなことが必要なのでしょうか。
まず、イノベーションには、図に示すようなアイデアの着想から影響力発揮までのプロセスが求められます。そのプロセスの中で、イノベーションは、その妨げになる悪(あ)しき伝統、疲労、懐疑心、コミットメントの欠如、適正でないガバナンスシステム、リソース不足(人、金、時間等)と出合うことになります。そこでは、社会や人や組織との葛藤や競争が生じます。したがって、それらの葛藤を乗り越え、それらの競争に打ち勝ち影響力を発揮するまでのプロセスがイノベーションには求められるのです。
出典:筆者作成
図 イノベーションに求められるプロセス
第2に、イノベーションには、関係者のニーズが必要です。関係者のニーズがないとイノベーションは実現できないということです。自治体議会や自治体行政のイノベーションであれば、主な関係者は市民・議会(議員、議会局職員)・行政(首長をはじめとする執行機関、執行部職員)です。最初に気づいたアクターが、他の関係者との間で話し合いをすること・話し合いができることが必要です。そして、その話し合いには、フューチャーデザインの視点が求められます。今日では、宮崎県木城町(きじょうちょう)のように、地方創生にフューチャーデザインの視点を取り入れている自治体も見られるところです(はじめてのフューチャー・デザインホームページ)。
