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特集 創生する議会基本条例 ―これからの議会のかたち

2025.11.10 条例

議会改革の柱としての議会基本条例

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3 議会の政策立案機能の強化

 国立市議会基本条例では、一般質問における一問一答形式の導入や市長等への反問権付与、議員間討議が規定されている。一般質問における一問一答形式がある程度浸透している一方、議員間での活発な議論を尽くすべきとの理念で導入された議員間討議は、条例制定後10年以上経過したが一度も行われていない。全国の市議会においては、2024年の1年間でも335市議会(41.1%)で実績がある(7)。制度を積極的に活用し、議会の政策立案・提言機能を強化することが求められる。
 また、反問権については、2024年の1年間で実績がある市議会は142市議会(17.4%)である(8)。国立市議会では「論点を整理するため」に認められているが、過去に一度、市長による行使の実績があるのみである。ただし、実際には「こういうご趣旨でよろしいでしょうか?」と答弁者が議員に質問趣旨を確認するような場面はある。厳密に運用すればこの類いも反問に該当するであろう。地方議会によっては反問権に加えて「反論権」を設けているケースもある。議会基本条例の逐条解説においては反問権の解説に「反論権ではない」旨の趣旨が書かれていることがあるが、実際には規定がなくとも当局側が答弁の中に反論を交えている場合が多いであろう。本来当局側が望んでいる「反問」は、例えば多額の予算がかかる事業が議員から提案された際に、「ご提案の事業を行うと、財政がひっ迫します。財源はどのようにお考えですか?」といった反問ではないだろうか。いずれにせよ、このような権利は性質上、やみくもに行使すべきものではないが、執行部と議会との健全な緊張関係を構築するためには、執行部側にも効果的な行使が求められよう。
 太子町議会基本条例では、一般質問については一問一答形式で行うとされている。「できる規定」ではないところに特徴がある。議員間討議の規定はないが、反問権については「議員の質疑等に対して内容の確認をする場合に限り」認められている。
 奥州市議会基本条例においても、一般質問については一問一答形式で行うとされている。太子町議会同様に「できる規定」ではない。また、反問権の規定はないものの、「質問及び質疑の趣旨を確認するための発言」は認められており、実質的にこれが反問権であろう。
 奥州市議会の取組みで注目に値するのは、議会基本条例に基づく政策立案の実効性確保を目的とした二つのガイドラインである。一つ目は議会基本条例9条に基づく「議員間討議のガイドライン」(令和5年8月)である(9)。討議を「対話─議論─討論」の3段階に整理し、議場でただ議員同士が意見を出し合うのではなく、合意形成のプロセスを「議員間討議」と定義付けている。また、会議形態やレイアウト、ファシリテーションの手法まで詳細に示し、生成AIを用いることや市民への公開手続も取り入れている点が特徴である。
 二つ目は「政策立案等に関するガイドライン」である(10)。これは、常任委員会を主な実施主体とし、政策形成のプロセスを体系化したものである。政策立案について、政策立案(条例案提案)、政策決議提案、政策提言に分類した上で、市民意見の把握からテーマ設定、原案作成時の当局との意見調整、議員・市民からの意見聴取等を経て案を確定するまでの詳細な手順を規定している。さらに、提言・立案後の政策について、その実施状況を調査及び評価し、不備があれば是正の措置を当局に求めるとしており、提言の「出しっぱなし」を防いでいる。自治体の予算編成は夏から秋にかけて行われることから、予算を伴う提案については9月末までに行うとしている点も評価できる。予算編成が佳境を迎える頃に提出された場合には、当局側も対応が難しくなり、予算化を急ぐあまり細部が詰められないままの見切り発車となる可能性が高いからである。このように、議会としての責任ある政策サイクルの構築を目指している点は注目に値する。
 これらの取組みにより、議会の議論の質や政策形成能力の向上が期待される。また、議会と執行部との健全な緊張関係が構築されることで、より効果的な行政のチェック機能が発揮されるであろう。

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