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特集 創生する議会基本条例 ―これからの議会のかたち

2025.11.10 条例

議会改革の柱としての議会基本条例

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2 住民参加型の政策形成プロセスの構築

 地方議会がその権限を十分に発揮するためには、住民参加型の政策形成プロセスの構築が不可欠であろう。住民に議会が何をしているかを知ってもらうという側面と、普段接している自らの支援者以外の住民意見を聴くという二つの側面から有効であると考える。
 国立市議会基本条例では、5条において、市民の意向を反映して政策形成へとつなげる目的で、議会報告会、市民の意見を聴く会・意見交換会、公聴会、参考人招致などを行うことを規定している。2022年、2023年に行われた意見交換会は、それぞれ36人、28人の参加となっている。議会報告会を単独で行うと参加者数の面で課題があることから、市役所敷地内で行われる「農業まつり」に合わせブースを設置する形で、農業まつりに来た市民が気軽に立ち寄れるよう工夫されたものである(2)
 太子町議会基本条例では、7条において、「住民と共に創る」として意見交換会、「議長への手紙」、「議会サポーター」が規定されている。出原議員の報告(出原賢治「『和のまちをつくる太子町議会基本条例』制定の経緯と特徴」(2025年9月25日号))にあるように、「議長への手紙」と「議会サポーター」についてはこれから制度設計が行われるということである。先にも述べたが条例に規定する以上、遵守することが当然に義務付けられる。今後の取組みを注視したい。議会報告会については「カフェトーク太子」が特徴的だ。大学生が加わることにより、活気が生まれる。なお、牧瀬先生による同様の仕掛けは、「パネルディスカッション『ヤバい議会基本条例の制定とこれから(上)』」(2025年10月10日号)の記事で触れられているように、神奈川県藤沢市議会でも行われている。
 奥州市議会基本条例では、13条において市民懇談会を行うと規定している。2024年度実績では、議員のなり手不足をテーマに延べ3日間5会場で91人の参加者を集めている(3)。市域が広い自治体なりの苦労が垣間見える。
 議会報告会等については、関心がある市民のみが集まり、そもそも関心がない市民は当然に参加しない。したがって、無関心層にアプローチする工夫が必要である。例えば、新潟県上越市では無作為抽出市民を対象に議会モニター制度を導入している(4)。議会モニター制度自体は2024年12月31日現在、全国40市議会で実績がある(5)。しかしながら、モニター募集に公募を用いた場合には、議会報告会に参加する層との重複は免れないであろう。前田(6)は市民討議会を例に、無作為抽出によって選ばれた市民は、公募で行った場合には参加しない新たな参加者層の獲得につながる可能性があることを明らかにした。議会モニター制度を実施する場合においても、上越市のように無作為抽出で行うことにより、政治無関心層にアプローチできる可能性がある。このような取組みにより、住民の政治参加意識が高まり、議会の活動内容等を知ることによって信頼感が醸成されることが期待される。また、議会側にも多様な市民の意見を反映した、より住民ニーズに即した政策立案につながることが期待できる。

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