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2025.10.27 政策研究

第67回 多元性(その1):政府間関係

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おわりに

 以上のように、政府という同質の観察単位を設定して、ある自治体政府を起点にすれば、様々な政府が存在し、多元的な政府間関係が成立していることになる(図)。あるいは、特定の自治体政府を起点にせずに全体を俯瞰すれば、政府間関係という地球的(global)・世界的(worldwide)な編み目関係(network)が成立している。あるいは、潜在的には成立し得る。そして、時々の政治情勢などによって、編み目の一部が強化されたり、編み目の一部が弱体化、さらには、切断されるのである(13)。ともあれ、自治体は、多かれ少なかれ、多元的な政府間関係の中に置かれている。
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(1) 法律用語では、「中央政府」や「全国政府」という呼び方はなく、「国」と「国家」が混在しながら使われている。例えば、国家公務員法や国家行政組織法の「国家」は、自治体を含まないので、「全国政府」、「中央政府」と同義である。しかし、国家賠償法の「国家」には、「国又は公共団体」(同法1条ほか)という表記で具体化されており、自治体が含まれているので、「全国政府」、「中央政府」と同義ではない。また、日本国憲法のいう「国」は微妙であり、「日本国」、「国事」、「国権」の「国」が「全国政府」、「中央政府」と同義とは限らない。「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」(憲法41条)とあるが、このときの「国」とは「全国政府」、「中央政府」に限定するのか、自治体を含むのかは微妙である。「国の財政」(憲法83条)や「国の収入支出」(憲法90条)の「国」は、自治体を含まないと理解するのが自然であろう。他方、「国の最高法規」(憲法98条)の「国」に、自治体が含まれないとは考えにくい。憲法改正については国会が関わり、自治体は関与しないので、国会は国家の議会のようである(憲法96条)。つまり、法律用語としての「国」、「国家」は曖昧なので、そのまま講学的に使うことはできず、使用するならば、慎重な留保が必要である。つまり、先取りして使っていたが、本論文での「国」は、「中央政府」、「全国政府」のことを指す。
(2) 世間的には、「政府」とは、しばしば国の行政府を指すことが多い。日常用語として、自治体の執行機関・執行部又は行政組織を指すときに、「政府」と称することはまずない。
(3) 三権分立制を水平的権力分立制とし、連邦・州や国・自治体の関係を垂直的権力分立制と位置付けることもある。幸田雅治編『地方自治論』(法律文化社、2018年)。
(4) 国家と社会を対置し、国家=国とするならば、自治体は社会の側に位置付けられることになる。しかし、国家と社会を対置したとしても、国家=統治機構の側に自治体を位置付けることもできる。
(5) ただし、連邦制にせよ単一主権制にせよ、多国民・多民族で構成されるならば、連邦政府を単に「国民的(national)」と呼ぶことは困難である。国家は同時に国民的であるとするモデルが、国民国家(nation state)であり、連邦国家が国民国家であるならば、連邦政府は全国政府である。しかし、連邦国家が国民国家であるとすることは、州(state)は国民国家ではないということになる。
(6) 古川俊一編『連邦制:究極の地方分権』(ぎょうせい、1993年)。
(7) 時に、自治体が自らを地方政府と称し、あるいは、論者が政府間関係を論ずるときに、国と自治体は同質であることから、権力バランスも、実態は上下主従であるとしても、規範的には対等であるべき、という主張を含むことがある。しかし、政府として同質であっても、特段の規範的主張を含まず、実態の権力バランスはどちらに傾いているかは実証問題とすることもできる。あるいは、実態として権力バランスがとれている状態を指して、政府間関係と称することもできる。さらには、政府間関係を論じても、規範的には対等であるべきと主張することには、直結しないこともある。
(8) 原田豪「欧州統合理論の再検討:新機能主義とリベラル政府間主義の比較から」神戸大学国際文化学研究推進センター研究報告書2021(2022年)95~117頁。
(9) とはいえ、民間団体の多くは、企業・業界団体や労働団体というような利益集団であるという意味で、それとは異なる団体としての、非営利組織(NPO)という表現が必要になった。
(10) 国際機関・国際組織を「政府」と呼び得るかには疑念もあり得るが、単なる民間団体ではないだろう。
(11) 市民による政府への信託統治に関する、松下圭一の基本的な理解である。松下圭一『市民自治の憲法理論』(岩波新書、1975年)。
(12) 例えば、2020年予定(2021年実施)の第3次東京オリンピックに関しては、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会である。同組織は、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)と東京都により2014年1月24日に一般財団法人として設立され2015年1月1日付けで公益財団法人となった。東京都庁オリンピック・パラリンピック準備局ウェブサイト:トップページ>大会情報>東京2020大会組織委員会>組織委員会について(https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/special/watching/tokyo2020/organising-committee/structure/)。
(13) 例えば、日露関係が国レベルで好転すれば、環日本海経済圏の自治体の日露間の交流は促進されるし、逆に国レベルで対立的になれば、交流は進みにくくなるだろう。しかし、逆に、自治体外交の独自の意義は、国レベルで好転したときに、あえて利害・理念対立を想起させ、国レベルで対立したときに、草の根の友好を促進する、という点にあるともいえる。

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