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2025.10.27 政策研究

第67回 多元性(その1):政府間関係

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国際関係と三層政府

 政府という観点に着目するならば、国際関係も、国家と国家との関係というだけではなく、全国政府と全国政府との関係が中心ということで、政府間関係と呼べなくもない。実際、国際組織・機関で、各加盟国の政府が集まって意思決定することを「政府間主義(intergovernmentalism)」と呼ぶこともある(8)。逆に、国際関係は、政府のみではないという意味で、非政府組織(NGO)が注目されてきた。国内の政治が、政府のみで成立するはずがないのは、ある意味で自明であり、様々な利益集団が存在するから、「非政府組織」とことさらにいうまでもない(9)。国際関係では、政府同士が中心だったことがかつては自明であったので、NGOへの注目が登場したのである。
 そして、国際関係では主権国家体系(state system)として、「政府」というよりは、「国家」と呼ばれることもある。実際には、国際関係で「国家」を代弁するのが「全国政府」のことが多く、国家=全国政府とみなされることもある。しかし、一国内における政府間関係の存在を前提にすれば、国家=全国政府とは言い難いだろう。国際関係も、やはり政府間関係と捉えることが自然である。しかし、同時に国際関係には、政府間関係ではない民際関係もあり、また政府民間関係もある。
 政府間関係は、一国内に限定することなく、外国や国際レベルにおける各種政府との関係にまで広がる概念である。つまり、ある自治体は、同一国内の全国政府だけでなく、他国の全国政府とも、あるいは、国際機関・国際組織とも関係を持ち得る(10)。例えば、米軍基地を抱える自治体は、国(日本国政府)との関係で基地負担の軽減を求めるが、同時に、米国政府との関係も重要である。なぜならば、日米安保条約に基づいて米軍基地を提供しているのは日本国政府であるが、実際に米軍基地の改廃・移転・拡縮を決めるのは、米国政府でもあるからである。
 また、例えば、国連がSDGsを定め、WTOが公共調達のあり方を決め、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が温室効果ガスの削減を打ち出せば、自治体は国連や条約締結国集団の方針と無関係ではいられない。国際関係を含めれば、自治体レベル・国レベル・国際レベルという三層・三種の政府から構成される(11)。それゆえに、自治体の政府間関係は、国際機関・国際組織に及ぶ。
 あるいは、オリンピックなどは、実態としては国威発揚を目指して開催国政府が主催しているように見え、民間団体であるオリンピック委員会も基本的には国・地域単位で構成されているものの、建前としては、都市政府又は都市政府が組織した半官半民団体(招致団体・開催団体)が招致し選定されて開催するものである。開催都市自治体政府が、国際オリンピック委員会(IOC)という国際組織(一応民間団体)や各国等オリンピック委員会や、実態としての各国政府との関係を取り結んでいる(12)

自治体外交

 ある自治体の関係は、他国の自治体との関係にも及ぶ。こうしたものを自治体外交又は都市外交という。自治体外交は、国家間外交ではないという意味で、民際外交の一種と位置付けられることがある。実際、姉妹都市など、住民間の相互交流・相互理解と友好関係構築を自治体政府が支援しているときには、あくまで民民関係が中心であろう。とはいえ、自治体政府が国際交流を政策として展開しているので、国内外での政府間関係でもある。それを「外交」と呼ぶべきかどうかは、異論もあり得ようし、定義の選択の問題にすぎないといえるが、外国の政府と自国の政府との関係が外交であるならば、外国の自治体政府と自国内の自治体政府との関係を、外交の一種に含めることも、不可能ではないだろう。
 それ以外にも、企業・外国人材・観光客誘致や企業進出の支援などに自治体政府が乗り出す場合には、誘致元又は進出先の自治体政府との関係が発生することがある。例えば、現在の我々日本人は基本的に怠惰であるので、全ての3K労働やエッセンシャルワーカーにおいて、深刻な労働力不足が発生している。地域振興の観点から、自治体はどうしても外国人材を求めざるを得ず、そのために送出元の外国の自治体に向けて、誘致・勧誘を行い、その前提としての「信頼」の構築を行ったりする。あるいは、自治体が水道・都市公共交通などのインフラ技術などを基に、他国の自治体のインフラ整備に援助・支援を行うこともある。もちろん、自国政府や他国政府との関係が消えるわけではないが、国レベルの政府だけの関係では収まらない。
 そして、例えば、基地返還・基地負担軽減を求めるときに、仮に基地や部隊の移設・移転や再配置ということになれば、基地・部隊が向かう国内の他の自治体(例えば、佐賀県政府など)や、外国の他の自治体(例えば、グアム政府など)との関係が発生する。もちろん、自治体としては、負担の転嫁合戦になるならば、国内外の他の自治体との関係は取り結ばない方が無難である。しかし、共同で基地返還・負担削減を要求する場合には、国際連帯の関係から自治体外交の展開は望ましい。また、基地を誘致する国内外の自治体がある場合には、基地を追い出したい自治体との自治体外交は、互恵的になる。

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