2025.10.27 政策研究
第67回 多元性(その1):政府間関係
連邦制と自治制の相対化・同質化
このように、連邦制と自治制は、出発点において主権国家(state)の所在が異なるので、質的には異なるもののはずである。国家が外に向けて結合して連邦ができ、国家が内に向けて(垂直的に)分権して国と自治体が分化する。しかし、現実世界においては、連邦国家と単一主権国家とは、「一国」として統治権力の単位となっている。国際連合(United Nation:第2次大戦中の「連合国」)や安全保障同盟/集団的安全保障や国際機関・条約などの国際関係においても、連邦国家と単一主権国家との質的な相違はほとんどない。端的にいえば、連邦国家と単一主権国家間で条約が締結され、国際組織の加盟国になる。実際に条約を締結するのは、連邦政府と全国政府である。その意味で、連邦政府と全国政府とは、ほぼ同質となっている。
同時に、連邦制は州が強く分権的であり、単一主権制の下の自治制では国が強いので集権的であると、質的には想定されてきた(6)。しかし、実際に、連邦と州の権力バランスがどうなっているのか、あるいは、国と自治体の権力バランスのあり様は、様々な要因によって異なってくる。例えば、連邦制であっても連邦の事務が多く、連邦が大きな財源を持ち、連邦法が州を大きく規制すれば、連邦政府が強くなり、集権的になる。単一主権制・自治制であっても、自治体の事務が多く、自治体が大きな財源を持ち、国法が自治体を規制する密度が弱ければ、自治体政府が強くなり、分権的になる(表2)。
表2 連邦制・自治制と分権・集権
比喩的にいえば、連邦制と単一主権制・自治制とは、質的相違というよりは、量的相違に相対的に重なり合いながら位置付けられるものである。こうなれば、連邦制及び単一主権制=自治制における、連邦政府と全国政府、州政府と広域自治体政府、自治体政府と基礎的自治体政府とは、ほぼ照応する関係とみなされる(表3)。あとは、それぞれの政府間関係の権力バランスが存在することになる。
表3 政府の照応関係
そのため、連邦制における連邦政府と州政府の関係と、自治制における全国政府と自治体政府との関係は、質的に同じ次元に位置付けられる。それゆえ、連邦政府・州政府・全国政府・自治体政府も、政府という点では同質であることを強調する。そして、連邦政府・州政府・全国政府・自治体政府の関係を、一括して扱うことが重要である。それが政府間関係である(7)。
