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2025.10.27 政策研究

第27回 「世界のルール」と自治体議会

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「『世界のルール』と自治体議会」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. (科学者が)先行きの危険が分かっているのに、知らん顔をしているのはよくないことは、「科学(者)のルール」「政治(家)のルール」と「世界のルール」「地域のルール」を表しています。
  2. 地域社会や自治体・国を越え世界に広がる科学は、科学に必要な人・学問・鉱物資源・生物資源などの「科学資源」を必要としますが、その科学資源は世界にまたがっています。そうすると、科学は全世界の人々が共有することが望ましいといえます。科学は、限られた地域や国の人々だけが利用できるものであってはなりません。
  3. 科学の進歩は、食料・健康・医療・福祉・交通・土木・建築など私たちの生活に大きく関わっています。また、科学の進歩には、いろいろな主体の連携・協力が必要になります。
  4. 地域コミュニティや伝統文化は、地域個性文化として国民文化や世界共通文化と均衡を保つことが求められる大切なものです。そして、これらの「三重する“三つの文化(地域個性文化・国民文化・世界共通文化)”」は、市民や政治行政に影響を及ぼします。したがって、そこには、「三重する文化」が必然となり、そのためのルールが必要になります。
  5. 「三重する“三つの文化(地域個性文化・国民文化・世界共通文化)”」は、〈民主主義の多様性という「民主主義の文化」〉を内包しています。
  6. 「地球環境」は「地域環境」と関連しています。「地球環境のルール」をつくり、地球全体での環境問題に取り組むことで、地域の環境保護・人権保護も進めることができます。地域で「地域環境のルール」をつくり、地域の環境問題に取り組むことで、地球全体の環境保護・人権保護に役立ちます。
  7. 行き過ぎた“大欲”は慎まなければなりません。“小欲知足”が求められているのです。また、「自分に甘くなりがちだからこそ自己抑制が求められ」、「自己抑制がやがて希望をもたらす」のです。
  8. 現在の「気候変動」は人間活動の結果として起こっています。
  9. 将来世代への配慮義務を中心とした研究テーマは、「世代間正義」と呼ばれているそうですが、このような研究が進展し、〈「世代間正義」というルール〉が確立することが期待されます。
  10. 知能社会で必要とされる新しい発想は、壮年・老年の世代からはなかなか出にくいようです。特に、既存のシステムを部分的に改善するような着実な発想ではなくて、システムの全体を変革するような大胆な発想は、なおさらです。その理由は、壮年・老年の人たちは長年システムに慣れ親しんできたからです。
  11. 「知識収集」「議論」「新しい発想」「社会のイノベーション」のルールづくりが必要です。
  12. 「進歩の時代」は「レジリエンスの時代」に道を譲っています。「レジリエンスの時代」には、〈「レジリエンスの時代」のルール〉が必要です。
  13. 世の中には未知の未知もあります。自分が知らないのを知らないということです。大切なのは、「既知の未知」と「未知の未知」を明るみに出し、ここ地球上の様々な生命力への深い関与を促す新しい適応的な統治の形態を生み出す能力です。
  14. 自治体議会の活動においても、「既知の未知」と「未知の未知」を明るみに出して考える手法としてのルールが必要になります。
  15. 地域規模から地球規模までを含めて、市民の自立を踏まえた、「多元化」・「重層化」という政治の《分節化》が進みます。この分節化つまり多元化・重層化は、政治における市民参加のチャンスの多元化・重層化でもあります。このことは、必然的に分節化が求められるという「市民参加のルール」を表しているのではないでしょうか。
  16. 求められるのは、過去を顧み、将来を展望し、現在の状況を見て、訊いて、考え、行動することです。これは、「フューチャーデザイン」であり、そこでは「フューチャーデザインのルール」が必要です。
  17. 古典は、読者の心に「考え方の軸」をもたらします。
  18. 人々の心に強い情緒的インパクトを与えるものは「民主主義の情緒的起爆剤」となり、私たちの「考え方の軸」となりえます。そこには、「考え方の軸」を希求する姿勢が求められます。
  19. もし、「考え方の軸」がないと適切な判断ができず、求められる政策が決まらないということになってしまいます。このことは、個々の議員や、議員を構成員とする議会にも当てはまります。
  20. 人と環境は依存し合っています。
  21. 成長から成熟へ舵を切ることが求められます。
  22. 「世界のルール」には、様々なものがあり、かつそれぞれのルールが影響を与え合いながら(影響を受けながら)重畳しています。
  23. 様々な「世界のルール」を制定したり、変更することは、条例という規範を決定する自治体議会にとって得意分野といえます。様々なアクターと連携して「地域のルール」だけでなく「世界のルール」にも取り組む自治体議会が期待されています。


■参考文献
◇宇佐美誠(2021)『気候崩壊─次世代とともに考える』岩波書店
◇久野収(1998)「湯川秀樹との対談『平和と科学者の責任』から」毎日新聞1963年5月10日(久野収著=佐高信編『久野収集Ⅳ 対話者として』岩波書店、79~82頁所収)
◇ジェレミー・リフキン〔柴田裕之訳〕(2023)『レジリエンスの時代─再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換』集英社〔原書は2022〕
◇鈴木宣弘(2024)「第四章 最後に生き残るためにすべきこと」鈴木宣弘=森永卓郎『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』講談社、131~172頁
◇松下圭一(1991)『政策型思考と政治』東京大学出版会
◇湯川秀樹(1998)「久野収との対談『平和と科学者の責任』から」毎日新聞1963年5月10日(久野収著=佐高信編『久野収集Ⅳ 対話者として』岩波書店、79~82頁所収)

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