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2025.10.27 政策研究

第27回 「世界のルール」と自治体議会

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〈「既知の未知」「未知の未知」を明るみに出して考える手法としてのルール〉

 人には、「既知の既知」と「既知の未知」と「未知の未知」があります。「既知の既知」は自分が知っているのを知っていることであり、「既知の未知」は自分が知っているのを知らないことであり、「未知の未知」は自分が知らないのを知らないことです。リフキンは、これら「既知の既知」「既知の未知」「未知の未知」について、「未知の未知もある。自分が知らないのを知らないということもあるのだ。だから、できるかぎりのことをして情報をすべてまとめ、それから、私たちは状況を基本的にこのように見ている、というときには、それは既知の既知と既知の未知についてだけにすぎない。そして毎年、私たちはあといくつか未知の未知を発見する」という話を紹介しています(リフキン 2023:146)。
 大切なのは、リフキンがいうように、「『既知の未知』と『未知の未知』を明るみに出し、ここ地球上のさまざまな生命力への深い関与を促す、新しい適応的な統治の形態を生み出す能力だ」(リフキン 2023:307)といえるのではないでしょうか。自治体議会の活動においても、「既知の未知」と「未知の未知」を明るみに出して考える手法としてのルールが必要になります。

「市民参加のルール」に求められる「フューチャーデザインのルール」、古典がつくる「考え方の軸」

 松下圭一は、地域規模から地球規模までを含めて、市民の自立を踏まえた、「多元化」・「重層化」という政治の《分節化》が進むとしています。そして、この分節化つまり多元化・重層化は、政治における市民参加のチャンスの多元化・重層化でもあるといっています(松下 1991:7)。このことは、必然的に分節化が求められるという「市民参加のルール」を表しているのではないでしょうか。
 そのとき、求められるのは、過去を顧み、将来を展望し、現在の状況を見て、訊(き)いて、考え、行動することです。これは、「フューチャーデザイン」であり、そこでは「フューチャーデザインのルール」が必要です。時に聴雪の心で古典を読み、その行間から聴こえてくる声を踏まえ、自らの考えを形成し、多角的立場に立ち・複合的に行動に移すこともあるでしょう。古典は、その時々に読者が解釈を与えていくことで新しい息吹を生じるものです。そして古典は、読者の心に「考え方の軸」をもたらします。古いものだけが古典ではありません。新しいものの中にも古典と呼ぶにふさわしいものがあることでしょう。また、古典には、小説や映画、ドラマや漫画など多様なものが含まれます。リフキンは、「もし共感が平等の最も深い表現ならば、当然それは、民主主義の情緒的起爆剤となる」(リフキン 2023:412)と述べていますが、そうであるならば、小説や映画、ドラマや漫画など、人々の心に強い情緒的インパクトを与えるものは「民主主義の情緒的起爆剤」となり、私たちの「考え方の軸」となりえます。そこには、「考え方の軸」を希求する姿勢が求められます。
 もし、「考え方の軸」がないと適切な判断ができず、求められる政策が決まらないということになってしまいます。このことは、個々の議員や、議員を構成員とする議会にも当てはまります。

人と環境は「相互依存」しており、そこには「多様なルール」が求められる

 人と環境は依存し合っています。地球の環境が壊れれば、人は地球に住めません。平和も豊かさも求めることができません。そうならないためには、成長から成熟へ舵(かじ)を切ることが求められます。そこには、先進国と後発国の葛藤があり、大きな分断も想定されますが、改めて熟考することが重要です。
 そのためには、成熟の内容を検討することが重要です。成熟とは、一つには脱成長を踏まえるものでなければなりません。このことは、急激な地球温暖化の状況を踏まえれば明らかです。二つには、社会が現状よりも良くなることが求められます。良くならなければ、成熟とはいえず、未熟にとどまるからです。
 「世界のルール」には、本稿で取り上げただけでも「科学(者)のルール」「政治(家)のルール」「地球のルール」「地域のルール」「連携・協力のルール」「三重する“三つの文化(地域個性文化・国民文化・世界共通文化)”のルール」「地球環境のルール」「地域環境のルール」「〈世代間正義〉というルール」「求められる〈知識収集〉〈議論〉〈新しい発想〉〈社会のイノベーション〉のためのルール」「〈レジリエンスの時代〉のルール」「〈既知の未知〉〈未知の未知〉を明るみに出して考える手法としてのルール」「市民参加のルール」「フューチャーデザインのルール」と様々なものがあり、かつそれぞれのルールが影響を与え合いながら(影響を受けながら)重畳しています。
 このように見ていくと、様々な「世界のルール」を制定したり、変更することは、条例という規範を決定する自治体議会にとって得意分野といえます。様々なアクターと連携して「地域のルール」だけでなく「世界のルール」にも取り組む自治体議会が期待されています。

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