2025.10.27 政策研究
第27回 「世界のルール」と自治体議会
〈気候変動の視座(ポジティブ・フィードバック〔「気候変動」「気候危機」「気候崩壊」〕)〉と〈「世代間正義」というルール〉)
宇佐美誠によれば、過去の「気候変動」は自然的原因によって起こってきたのに対して、現在の「気候変動」は人間活動の結果として起こっています(宇佐美 2021:14)。また、人為的原因が気温を上げると、それによって自然的要素が働いて、気温が一層上がっていくというポジティブ・フィードバックが、専門家によって指摘されているとしています。さらに宇佐美は、現在の「気候危機」がいっそう深刻化し、変化が不可逆になって、予想もつかない事態になる可能性があるとし、これが「気候崩壊」だとしています。(宇佐美 2021:16-17)。そして、これら(=「気候変動」「気候危機」「気候崩壊」)〔( )内は筆者補〕による水不足・食料不足(宇佐美 2021:19)や、健康被害(&不衛生)・世界不況・気候難民・戦争・難民という問題が起きると述べています(宇佐美 2021:20-21)。
このことは、「私が生きている間は大丈夫、その先のことは知らない」という人間の気持ちから生まれた人間活動の帰結です。これは世代間に生じてくる問題です。宇佐美によれば、将来世代への配慮義務を中心とした研究テーマは、「世代間正義」と呼ばれているそうですが(宇佐美 2021:44)、このような研究が進展し、〈「世代間正義」というルール〉が確立することが期待されます。
求められる「知識収集」「議論」「新しい発想」「社会のイノベーション」と、そのためのルール変更
宇佐美は、知能社会で必要とされる新しい発想は、壮年・老年の世代からはなかなか出にくいように思うといいます。特に、既存のシステムを部分的に改善するような着実な発想ではなくて、システムの全体を変革するような大胆な発想は、なおさらだといいます。その理由は、壮年・老年の人たちは長年システムに慣れ親しんできたからだとし、システムにとらわれない自由なイノベーションの提案が若者には期待されていると述べています(宇佐美 2021:61)。
そして、気候危機という現状、気候崩壊のリスクというのは、人類がこれまで経験したことのない、全く新しいタイプのグローバルな問題だとし、この問題に立ち向かうためには、個人の心がけとか日頃の行動とかでは全く不十分であって、社会の仕組みが大きく変わらなければならないとし、そのためには既存のシステムにとらわれない新しい発想が、ぜひとも必要だと述べています(宇佐美 2021:61-62)。また、インターネットで知識を得たら、今度は周りの人と議論して、自分自身の考えをどんどんつくっていってほしい。そこから新しい発想が生まれて、やがては社会のイノベーションにつながるかもしれない。イノベーションが社会のあちこちで起こって、さらに、次のイノベーションを生み、そうやって社会の仕組みが大きく変わっていくならば、その先に、今の気候危機から抜け出す道が開けてくるのではないか。このような可能性を信じたいと述べています(宇佐美 2021:62)。
そこには、そのための、すなわち、「知識収集」「議論」「新しい発想」「社会のイノベーション」のルールづくりが必要になります。このことは、「ルール変更」をもたらします。
〈「レジリエンスの時代」のルール〉変更
ジェレミー・リフキンは、「レジリエンス」(=適応力)〔( )内は筆者補〕という言葉が、無数の場所で繰り返し聞かれる新しい決まり文句になった。この言葉は、目前に迫った危うい未来を生き抜くキーワードとなりつつあるとしています。そして、「進歩の時代」は「レジリエンスの時代」に道を譲ったとし、「進歩の時代」から「レジリエンスの時代」への大変革は、私たちの種が周囲の世界を認識する方法の、大規模な哲学的・心理的再調整を、すでに引き起こしているとしています。そして、この変革の根本にあるのが、私たちの時間的志向と空間的志向の全面的な転換だと述べています(リフキン 2023:11)。
「進歩の時代」を終始導いてきた根本的な時間的志向は「効率」でした(リフキン 2023:11)。時間に関して、「進歩の時代」が効率と足並みをそろえて進んできたのに対し、「レジリエンスの時代」は適応力と歩調を合わせます。効率という時間的志向から適応力へと乗り換えれば、それがいわば再入国許可証となり、私たちの種は、自然界からの分離と搾取から、地球を活気づけている多くの環境の力との再融合へと、回帰することができるとしています。つまりそれは、ますます予測が難しくなっていく地球上で、人間の営為を再構築する節目となるのだと述べています(リフキン 2023:12)。
このような「レジリエンスの時代」には、〈「レジリエンスの時代」のルール〉が必要です。
