「民主主義の多様性」は重要──〔〈三重する“三つの文化（地域個性文化・国民文化・世界共通文化）”のルール〉と〈「民主主義の文化」としての“多様性”〉〕の必要性

　鈴木宣弘は、地域コミュニティや伝統文化を破壊し、結果として一部の企業だけがもうかるなら、まさに「いまだけ、金だけ、自分だけ」ではないかと述べています（鈴木 2024：162）。地域コミュニティや伝統文化は、地域個性文化として国民文化や世界共通文化と均衡を保つことが求められる大切なものです。そして、これらの「三重する“三つの文化（地域個性文化・国民文化・世界共通文化）”」は、市民や政治行政に影響を及ぼします。したがって、そこには、「三重する文化」が必然となり、そのためのルールが必要になります。
　鈴木によれば、衆参両院の定数について佐賀県が面白い提案をしています。現行、衆参両院の定数は選挙区の人口に基づいて配分されていますが、これを食料の供給力で計算し直すとどうなるかという内容です（鈴木 2024：162）。この佐賀県のような、一見突飛に見える発想も、「三重する“三つの文化（地域個性文化・国民文化・世界共通文化）”」が〈民主主義の多様性という「民主主義の文化」〉を内包していることから生まれるものです（図参照）。

出典：筆者作成
図 「三重する“三つの文化（地域個性文化・国民文化・世界共通文化）”」と「民主主義の文化」の関係〉

「地球環境のルール」「地域環境のルール」としての“小欲知足”と“自己及び他者による抑制”

　ここでは、「世界環境」を「地球環境」として「地球環境のルール」について考えてみましょう。「地球環境」は「地域環境」と関連しています。その例は、「地球規模での温暖化による海面上昇と、沿岸地域での洪水・浸水リスクの高まり」「地球全体の気候変動と、地域の異常気象の増加」「地球全体の気候変動と、地域ごとの降水量の変化（乾燥化・水資源の不足）」「地球規模の大気汚染による酸性雨と、地域の森林や農作物への被害」「地球規模の大気汚染と、地域での皮膚がんや目の疾患等の健康被害の増加」など多様です。世界で「地球環境のルール」をつくり、地球全体での環境問題に取り組むことで、地域の環境保護・人権保護も進めることができます。地域で「地域環境のルール」をつくり、地域の環境問題に取り組むことで、地球全体の環境保護・人権保護に役立ちます。
　しかし、人は往々にして「私がやっても」とか「まだ大丈夫」といったように、自分に甘くなりがちです。「自ら主体的に」とか「もう危険」という気持ちは「甘さ」の前に溶けてしまい、すぐに忘れてしまいます。「甘さは危険そして危機につながる」のです。「自ら主体的に」とか「もう危険」という気持ちを持って対応することは、厳しい生活を送ることになるでしょう。しかし、「厳しさは危険そして危機を避けうる」のです。行き過ぎた“大欲”は慎まなければなりません。“小欲知足”が求められているのです。また、「自分に甘くなりがちだからこそ自己抑制が求められ」、「自己抑制がやがて希望をもたらす」のです。