2025.09.25 政策研究
第26回 「市民・自治体・国・国際機構の関係」と外交
「ブラックボックス解明意識の喪失」と、求められる「ブラックボックス不解明事情の超克」
世界のどこかで、異常気象に伴う災害や思わぬ事故の発生あるいは大規模感染症の流行やテロ行為により、さらに大きな有事すなわち戦争や紛争につながることがあります。その戦争や紛争は、日本で暮らしている私たちの生活にも、身体の危険・環境の破壊・物価の高騰というように、あらゆる分野で影響を及ぼします。
そして、そこには「ブラックボックス」という“見えない闇”があります。時に「ブラックボックス」は「知ってはいけない闇」あるいは「知る必要のない闇」として、毎日を忙しく暮らす私たちの心から薄れ、忘れられてしまいます(=「ブラックボックス解明意識の喪失」)。したがって、従来「ブラックボックス」に関心を持つ人は、「ブラックボックス」により大きな影響を受けた当時者や関係者、そして研究者に限られたのです。しかし、現在では“行き過ぎた経済活動”により過大に発生している二酸化炭素、窒素、リン等による地球温暖化のように、ブラックボックスの解明が進んできているものが少なくありません。そして、残念ながらブラックボックスの解明が進み、問題が分かっていても、解決に至らないことが少なくないのです。なぜなら、そこにはいわゆる各国各地域の国内・国外事情があるからです。この事情には、政治的な事情、経済的な事情、宗教的な事情、歴史的な事情など様々なものがあります。私たちには、このような事情を超克することが求められているのです(=「ブラックボックス不解明事情の超克」)。
外交は万能ではない──では、外交とは?
外交には、TPO(Time(時)・Place(場所)・Occasion(場合))に応じて市民・自治体・国・国際機構が関係してきます。ここでは、小原雅博の議論に従って論を進めたいと思います。小原は、「外交は万能ではないし、労多くして益少ない結果に終わることもしばしばである」(小原 2025:ⅱ)、「世界最強の軍隊を持つ米国でさえ、第二次世界大戦後のほとんどの戦争で勝利できなかった」(小原 2025:ⅲ)、「外交にはさまざまな制約や限界がある。それでも、(中略)論じ、理解を深めることが平和への第一歩である。国際社会は、どうしようもなく不完全だ。しかし、わずかでも希望と可能性がある限り、私たちは外交に全力を尽くすべきだ」(小原 2025:ⅳ)、「外交慣例は政府や国民による理解と尊重、及び外交に携わる者の自覚が伴ってこそ持続し得るのである」(小原 2025:28)、「戦後日本の外交は戦争の教訓から再出発したのであった。その根本は外交の優先であり、『不戦不敗』であった」(小原 2025:129)と述べています。
では、「外交」とは、どのようなものでしょうか。小原は、外交を「法と力」「内政と外交」「国益とパワー」「戦略と地政学」という四つの分野(要素)に分けて視点(認識)を論じています(表2参照)。
出典:小原(2025:138、149、152、159、162、164、167、174、182-184、202、204-208、211、213、233、244)をもとに筆者作成
表2 小原雅博における「四つの分野(要素)から見た『外交』の視点(認識)」
