2025.09.25 政策研究
第26回 「市民・自治体・国・国際機構の関係」と外交
自治体と国の関係──〈議会優位の「分権─融合」型政府運営〉を目指すべき
〈「分権─融合」型政府運営〉については、天川晃による「天川モデル」が知られています(天川 1984:208)。天川は、〈「分権─集権」軸〉と〈「分離─融合」軸〉という二つの軸を組み合わせ、〈「集権・融合」型〉〈「分権・融合」型〉〈「集権・分離」型〉〈「分権・分離」型〉という四つの類型を導き出し、戦後日本の中央地方関係は、全体的な方向性として〈「集権・融合」型〉から〈「分権・融合」型〉に変容したという分析をしています(図2参照)。
出典:天川モデルを参考に筆者作成
図2 天川モデルから見た日本の中央地方関係
〈「分権─融合」型政府運営〉に揺らぎが見える今日の日本でも、自治体と国の関係はまだまだ〈議会優位の「分権─融合」型政府運営〉を目指すことが望ましいのではないでしょうか。
まず、「分権」について考えると、日本では議院内閣制を規定している憲法からも分かるように、「市民(国民)による国会議員の選出」から「国会議員の選挙による内閣総理大臣の選出」という政治過程があり、国(国政)における議会優位は明らかです。自治体については、憲法において二元代表制を採用しており、市民は議会を構成する議員と行政のトップである首長を別々に選んでいます。しかし、地方自治法では、条例制定や予算決定などの重要事項は、議会の議決が必要となることから、議会優位であると見ることができます。以上のことから、日本においては「自治体と国の〈議会優位の政府運営〉」を目指しているといえます。
次に、「融合」について考えます。「融合」方式と「分離」方式は、ともに長所短所があります。そのため、今の「融合」方式を当面は継続することが望ましいと考えられます。なぜなら、「分離」方式は戦前から継続しており、「分離」方式に適合した人員・組織・財源・仕組み等が定着しており、現時点では「融合」方式を「分離」方式に変更するよりも、その負担の労力を「分権」に注力することが必要と考えるからです。「融合」と「分離」の選択は、将来の課題として捉えることが現実的ではないでしょうか。
これらのように考えると、「自治体と国の〈議会優位の政府運営〉」と「自治体と国の〈「分権─融合」型政府運営〉」を踏まえれば、今日の日本は「自治体と国の〈議会優位の「分権─融合」型政府運営〉」を目指しているといえます。その位置付けの中に、議会はあるのです。
国際機構は、国際連合〈国際政治機構〉だけでなく、〈国際専門機構〉が成立しており、それぞれの専門政策領域で議会型調整・統合を果たす
前述したように、国際機構は、国間ないし国の関係を超えた事項を扱う政府です。代表的なものに国際連合があります。これらの国際機構は、松下圭一がいうように、国連つまり〈国際政治機構〉だけでなく、各専門政策領域で数十の〈国際専門機構〉が成立しています。これらは、それぞれの専門政策領域で、独自に国際世論を結集して、議会型調整・統合を果たすとともに、国際立法の立案・執行には、国の省庁、自治体の部課といった位置を担っています。国際機構は、いわば国際政治機構、国際専門機構の多頭型複合となっているのです。国際機構とは、国際機構〈複合〉なのです(松下 1991:323-324)。そして、国際社会でも、戦争型〈闘争〉は、各国際機構における議会型〈競争〉に置き換えられて、国際立法を積み重ねるのです(松下 1991:324)。
しかし残念ながら、世界レベルで見た場合、人口・貧困・衛生・医療・食料・エネルギー・経済・民族・宗教・言語等の問題を伴いながらの闘争(戦争、紛争)に見られるように、その歩みには時間がかかってしまうのが現実です。
なお、国際市民ないし市民型NGOも世界を舞台に活動し、成果を上げています。また、こつこつと地道に活動している人もいます。例えば、広島や長崎の原爆についての老若男女の語り部や活動する人々は、市民であり、国民であり、国際人(国際市民)であるといえます。
