①について
大きく、次の(1)~(3)の規定を設けています。
(1) 選挙運動のためでないポスターの掲示や、公職の候補者以外の者による掲示、複数の掲示をすることは、公選法144条の2第5項に違反することを明示し、公選法の規定に違反してポスター掲示場にポスター等が掲示されたときは、公選法147条の規定による撤去命令、公営のポスター掲示場を管理する権限に基づく措置その他の必要な措置を講ずることとしています。
より具体的には、
- 選挙運動用ポスター等は、選挙運動のために使用するものであって、専ら財産上の利益を得るために使用するなど、選挙運動のために使用するもの以外のものをポスター掲示場に掲示してはならない(条例2条2項)
- ポスター掲示場に掲示する選挙運動用ポスター等は、公職の候補者がポスター掲示場ごとにそれぞれ1枚掲示することができるものであり、公職の候補者以外の者が掲示し、又はポスター掲示場ごとに1枚を超えて掲示してはならない(条例2条3項)
- 選挙運動として動画配信等インターネット上で得た広告料収入等について、適切に収支報告書の提出等をしなければならない(条例2条4項)
- 何人も、公選法に規定する選挙の自由妨害に当たる行為その他法令に違反する行為をしてはならない(条例2条5項)
と、公選法上至極当然のことですが、候補者その他の関係者・関係機関にとって、より分かりやすくなるように書き下ろした条項などを設けています。
そのような条項を設けたのは、当時、選挙運動のためのものでないポスターが掲示されたり、同じポスターが複数掲示されたりすることについて、そのような行為が認められている、あるいは脱法行為であるかのように報じられることもあったため、公選法上違法であることが分かるよう、条例で明記することとしたのです。さらに、選挙の自由妨害に当たる行為についても、公選法で罰則(直罰規定)をもって禁じられますが、そもそもそうした罰則が科せられるような行為をしないように、という禁止規定を明記しました。
(2) 公明かつ適正な選挙の確保のため県及び市町村の選挙管理委員会が、公選法に基づく権限を適切に行使し、その事務を適正に管理するとともに、相互に連携・協力することを規定しています。
なお、条例3条3項において、県及び市町村の選挙管理委員会は、公選法に違反する文書図画がポスター掲示場に掲示されたと認めるときは、公選法に基づく撤去命令とともに、市町村のポスター掲示場の管理権限に基づく必要な措置(例えば、明白に選挙運動用ポスター等でないものが公営ポスター掲示場に貼られていた場合に、ポスター掲示場としての機能を損なわないよう当該文書図画等の撤去を求めるなど)を行うものとすることを規定しています。
(3) 選挙の自由妨害罪に該当する行為その他急迫不正の侵害行為に対し、選挙管理委員会、警察等の関係機関は、関係法令に基づき、当該行為を速やかに停止させるよう努めるものとしています。
上記のとおり、この条例では、選挙運動等に関して公選法その他法令に定めのない新たな規制・制限を設けようとするものではなく、あくまでも、公選法、刑法、迷惑防止条例など現行の法令の範囲内で、そうした法令の規定を適切に解釈・運用・執行していくことで選挙の公明・適正を確保することを企図しています。いわゆる上乗せ・横出し条例でもありません。
②について
①のほか条例では、選挙人の政治・投票参加の促進のため、学校等における主権者教育の推進や期日前投票所の増設等投票環境の向上に資する対策の検討及び実施に努めることを規定しています。
その背景として、条例の制定の1年前、昨今の投票率の低下等に対する危機感から、県・市町村で問題意識を共有しつつ、こうした課題に対する施策を検討するため、「投票率低下防止等に向けた政治参画のあり方研究会」(以下「研究会」という)を開催し、主権者教育の推進や投票環境の維持・向上等の具体的な施策について、多角的な議論を行い、これから県・市町村として取り組んでいくべき施策、方向性等をとりまとめたことがベースにあります。
研究会の報告書の中では、例えば、主権者教育に関しては、小・中学校等の早期の段階から発達段階に応じた主権者教育を行っていくことや、自らの投票・行動が政治や地域に影響を与えていく、変えていくことができるという感覚(政治的有効性感覚)を養うことなどが重要とされ、また、投票環境の維持・向上に関しては、選挙の最も基本的なインフラである当日投票所が減少傾向にあり(鳥取県では最も多かった時期と比べ、約6割強まで減少)、その最も大きな要因が投票立会人の確保困難であることを明らかにし、その処方箋の一つとして、投票立会いをオンラインで行えるようにし、投票立会人を確保しやすくすることなどが提案されました。
こうした研究会報告書の内容を条例には盛り込んでおり、主権者教育関係(5条)では選挙管理委員会が教育委員会等関係機関と連携し、小学生等若年層から成年に至るまでの発達段階に応じた教育の充実を図っていくことや情報リテラシー能力を高める教育を行っていくこと、投票環境関係(6条)では地域の実情に応じ、期日前投票所の増設その他選挙人の利便性向上に資する対策の検討や実施に努めることなどを規定しています。
