「和のまちをつくる太子町議会基本条例」の特徴
制定された議会基本条例の特徴について、いくつか述べてみたい。
(1)前文を手紙の形で
前文は「未来の太子町へ」から始まる手紙の形で記載し、議会の基本的な方針とともに私たちの思いと決意を込めた。現在と将来の住民、これから町や議会を担っていくであろう人々全体に向けたメッセージとなっている。
条例名にも「和のまちをつくる」の一言を加え、この条例の意思を明確にした。
(2)見出しに「十七条憲法」の理念を
各条の見出しには、太子町議会やその議員が指針とすべき理念を掲げた。「十七条憲法」は聖徳太子が当時の宮廷役人の規範として制定したとされ、日本書紀巻第二十二にその記述が見える。1400年前のものであるにもかかわらず、議論を尽くすことや、公平・公正であること、勤勉であること、人を大切にし礼節を重んじることなど、現代にも通じる思想が読み取れる。議会に活かす試みとして整理し、見出しに使用するとともに条文の内容にも反映させた。議会基本条例は議会の最高規範であるから、議会の理念を分かりやすく記しておくことには意義があろう。
(3)全体を「です・ます調」で記述し、分かりやすく
とかく法律の条文や行政文書は難解な文章になりがちで、一読して意味が分からないものも見受けられる。「住民と共創する議会」を目指すのであれば、その基本条例は住民が読んで分かりやすいものでなければならない。条文をつくる際には、この点にできる限り配慮した。
(4)特色ある条文
条文の第1項には大きな理念を示し、第2項以降により具体的な規定を記述する構成を基本とした。具体的規定は全議員による協議の末に選定されたものであり、独自性のあるものも含まれている。
住民との共創に関するものでは、年に1回以上開催すると規定した「住民との意見交換会」(7条2項)や、住民に常に開かれていることの宣言でもある「議長への手紙」(7条4項)、住民の議会活動への参画を期待した「議会サポーター」(7条6項)、住民の協力に対する「表彰」(11条5項)などの制度を設けた。多様な価値観を尊重し、礼節を持ちつつフラットな関係性で議論を尽くそうとする姿勢は、「服装の自由化」(5条2項)や、「さん付け」呼称の推奨(13条2項)の規定となった。ほかにも、年1回以上の「健康診断の受診」(14条2項)や「主権者教育推進」(11条6項)などがある。
「逐条解説」に条文制定の趣旨を記しておいたので、参照願いたい。
