全員参加の議会改革特別委員会の設置へ
太子町議会には「議会運営に関して協議したい事項」という制度があり、1年に1度、議員から議会運営委員会に提案できる仕組みになっている。改選直後の2023年6月、議員から多数の項目が提案された(筆者は当時、議会運営委員会の委員長だった)。通常は6人からなる委員会で協議し対応を決定していくのだが、挙げられた項目の中には「議員報酬・議員定数の見直し」や、「政務活動費の復活」、「会期や委員会構成の再考」といった議会の根本に関わる課題が含まれていた。これらは少人数ではなく全員で協議した方がいいだろうということから、この際、議会改革全般についての課題を整理し、全議員を委員とする「議会改革特別委員会」を設置して取り組んでいくこととなった。
議会改革の強化に向け、外部講師を招いた議員研修会を実施し、牧瀬稔教授(関東学院大学)とアドバイザー契約を結ぶなどの準備を調えた上で、2024年3月、「議会改革特別委員会」が発足した。地方自治法が改正され地方議会の役割がますます重要となる中、多様な住民の参画と地域に資する活力ある議会の姿を求め、まずは議会基本条例の制定を視野に協議を開始した。
太子町議会ならではの条例を
「議会改革特別委員会」では、既存の議会基本条例を検討し、各議員が条文に含めたいと思う内容を募ることから着手した。それに基づいて条例の骨子案を作成し、目的や意義を全員で協議しつつまとめ直すという作業を繰り返した。
検討の初期に、「太子町議会らしい基本条例をつくろう」という意見が出た。既に半数を超える地方議会が基本条例を制定している中で私たちは後発である。ならば、先行事例の模倣ではなく独自性のある条例にしようということだ。では、「太子町らしい」とは何だろうか。この議論は、次のような基本的方向性に収斂(しゅうれん)していく重要なものとなった。
① 「和の精神」を活かす
聖徳太子「十七条憲法」の理念を条文に取り入れ、現代の議会に活かすとともに、「和のまち太子」にふさわしい条文の内容とする。
② 「住民と共創する議会」を目指す
住民とともに議会を創るという視点を持つ。住民に分かりやすい平易な文言で条文をつくる。
③ ブレーキ条例ではなくアクセル条例で
当たり前のことや上位法に記載されていることでも、大切なことは私たち議会の宣言として記す。ただし、できないことを書き連ねることはしない。
①は、これがやはり私たちのアイデンティティであるということ。②は、本条例の性格を示す重要な点で、今期議員の特徴なのだろうが、住民に関わる条文に特に関心が強く、多くの議論がなされる中で「議会共創」が合意に至った。③は、私たちの考えを伝えることが大切であり、また、条例は議員を規制することが目的ではないという意見もあった。
委員会の開催は20回を超え、その間、アドバイザーの牧瀬教授を招いた議員研究会や住民の声を聴く意見交換会の場も設けた。約1年の検討期間を経て、2025年2月20日、「和のまちをつくる太子町議会基本条例」が全員賛成により可決、成立した。
