地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2025.09.10 議会運営

第100回 契約予定価格の公表

LINEで送る

 事業者が情報公開条例を利用して予定価格の開示を受けることができるとすれば、入札の公正を害するおそれがある。その他、地方公共団体等が契約、交渉又は争訟の当事者となる場合の不開示規律が、上記のロである。他方、当該入札に関し契約の相手方が事実上確定した後であれば、予定価格や積算内訳は、もはや上記の不開示情報(ロ)の該当性を失うこととなろう(すなわち、「不当に害するおそれ」がなくなる)。そのため、執行機関が情報公開条例を根拠として開示ができないというのであれば、その情報提供がなぜ地方公共団体の財産上の利益を害するのかを問うことが必要である。
 執行機関が議会の疑問に対し十分な説明をせずに、不開示情報性を主張して、情報提供をしないのであれば、自治法98条に基づき議会が行う事務検査権による資料の請求や100条調査に基づく記録の提出を求めることも考えられる。これらに対し、正当な理由なく執行機関が議会の事務検査権及び100条調査権に基づく資料要求に応えないことはできず、応えない場合は、自治法違反であり、100条調査においては告発の対象になる場合があることに留意すべきである。
 次に、個人情報保護条例の観点から議会の執行機関に対する資料要求を考慮すると、個人情報の保護に関する法律69条1項により、行政機関の長等は、法令に基づく場合には利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することは可能であるとされていることから、法律に基づき各地方公共団体で制定した個人情報保護条例により、議会が個人情報を含む資料について自治法98条に基づく事務検査権又は自治法100条に基づく記録の提出要求を行えば、正当な理由がない限り長は議会に当該資料を提出する必要があると解される。
 また、自治法に基づかない議会の長に対する個人情報を含む資料の請求があった場合、個人情報保護委員会事務局による「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)」(令和4年2月(令和6年3月更新))のA3-3-8において、個人情報の保護に関する法律69条2項3号の「地方公共団体の機関」には議会が含まれることから、行政機関の長等は、議会に対し、保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける議会が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当の理由があると判断すれば、行政機関の長等は利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができるとされている。したがって、議会の審議のために自治法に基づかない議会からの個人情報を含む資料要求に応えることは可能であると解する。
 なお、個人情報を含む資料等を長等が議会に提出するに当たり、当該取扱いについて個人情報保護の観点から、議会に対し秘密会の開催などの事実上の措置を要求することが考えられる。ただし、秘密会にするかどうかは議会が最終的に判断すべきものであり、議会が当該判断をしなければ議会の審議において特段の措置をしないこともありえることには留意を要する。

○個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)(令和4年2月(令和6年3月更新))
Q3-3-8 同一の地方公共団体の異なる機関間における保有個人情報の提供について制限はあるか。
A3-3-8 同一の地方公共団体の異なる機関間における保有個人情報の提供が行われる場合であって、当該保有個人情報について、法令に基づかずに、かつ、利用目的以外の目的のために提供する場合は、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがなく、かつ法第69条第2項第3号の要件を満たす必要があります。なお、法第69条第2項第3号の「地方公共団体の機関」には議会が含まれるため(法第2条第11項第2号)、地方公共団体の機関が法令に基づかずに保有個人情報を利用目的以外の目的のために議会に提供する場合も、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがなく、かつ法第69条第2項第3号の要件を満たす必要があります。(令和4年4月追加)

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年1216

山の手線開通(明治42年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る