2025.08.25 議員活動
第27回 生前贈与と相続との税の違いは
7 相続時精算課税制度のデメリット
相続時精算課税を選択する旨の届出書を提出した場合、提出された届出書は撤回することができず(相続法21条の9第6項)、一度相続時精算課税を選択すると、特定贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことはできない。相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した者は贈与税の申告を行う必要があり、手間がかかるなどのデメリットがある。
8 いずれの制度を選択すると有利か
個別の事情によって有利な制度が異なってくるが、以下のような点から有利となる可能性が高い場合を挙げることができる。
まず、暦年課税贈与であれ相続時精算課税制度であれ、相続税における小規模宅地等の特例の対象宅地に該当する宅地を贈与すると、相続税における小規模宅地等の特例を使用することができなくなる。小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす状況で宅地等を相続した場合、その宅地等の相続税評価額が最大80%減額される特例である。小規模宅地等の特例など相続税における特例を利用する場合には、生前贈与をしないことが有利になる可能性がある。
次に、年間110万円の基礎控除の範囲内であれば、暦年課税贈与により遺産を減らすことで相続税を減らすことができる。
他方で、相続時精算課税制度を利用して生前贈与をする場合、2,500万円の特別控除がある。多額の贈与が必要な場合、相続時精算課税制度が有利となる可能性がある。
また、相続時精算課税制度により贈与を受けた財産の価額は、相続発生時に相続財産の価額に加算して相続税額を計算する。その際の相続財産への持戻し計算では、贈与時の時価により評価される。値上がりが予想される財産がある場合、本制度により贈与しておけば、相続税の対象となる財産の評価額を減らし、相続税を抑えることにつながり得る。
制度の選択が有利なのかどうかについては、税理士等の専門家に相談することが肝要である。
9 相続時精算課税の選択手続
相続時精算課税制度を利用したい場合には、相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に納税地の所轄税務署長に相続時精算課税を選択する旨の届出書(相続時精算課税選択届出書)を提出する必要がある(相続税法21条の9第2項)。相続時精算課税の適用を受けるかどうかについては、贈与者である直系尊属ごとに選択が可能である。
