2025.08.25 議員活動
第27回 生前贈与と相続との税の違いは
弁護士 瀬戸康宏
生前贈与と相続との税の違いは。
1 贈与税・相続税
相続税は、死亡した人(以下「被相続人」という)の財産を相続又は遺贈により取得した配偶者や子など(以下「相続人等」という)に対して、その取得した財産の価額を基に課される税である。
贈与税は、個人からの贈与により財産を取得した者(以下「受贈者」という)に対して、その取得財産の価額を基に課される税である。個人が個人から財産を無償で取得した場合には、相続税又は贈与税が課税されることから、所得税は課税されない(所得税法9条1項17号)。
生前に贈与した場合とそうでない場合とでは、被相続人の遺産額に大きく差が出る。相続税の負担に不公平が生じるのを避けるため、生前贈与による取得財産に対しては贈与税が課税される。このように、贈与税は相続税の課税体系を補完する機能を有することから、相続税と贈与税は双方とも相続税法に規定されている。
2 生前贈与加算と贈与税額控除
贈与税が相続税の補完税としての役割を持つことから、生前の贈与をできるだけ相続財産に取り込み、累積課税を行うことにより相続税の負担軽減を回避する必要がある。
そのため、被相続人から遺産を取得した者については、相続開始前7年以内に被相続人から暦年課税による贈与により取得した財産がある場合には、その財産の価額を相続税の課税価格に加算する制度が設けられている(生前贈与加算。相続税法19条)。なお、令和5年度税制改正前は相続開始前3年であったが、改正により7年に延長となった。
他方で、贈与財産に課された贈与税と相続税の課税価格への加算による相続税との二重課税を排除するため、加算した贈与財産に課税されていた贈与税相当額を算出税額から控除することとされている(相続税法19条1項括弧書)。
3 贈与税の暦年課税
贈与税の計算は暦年単位(1月1日から12月31日まで)によるため、その年分の贈与税確定後、その翌年に贈与税の申告書を提出することとなる。申告書の提出義務者は、その年分の納付すべき贈与税額がある者となる。
贈与税の暦年課税は既述の生前贈与加算の制度を除き、基本的には相続と関係なく課税される。
