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2025.08.25 政策研究

第65回 経営性(その5):新公共経営(NPM)

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市場競争の創出

 行政が民間のような経営性を発揮できないのは、行政が地域独占で、競争による淘汰が発生しないからである。しかし、様々な形で競争を埋め込んで、経営性を確保することが考えられる。
 例えば、職員の採用・出世競争は、労働市場という形で人事管理に経営性を導入しようとするものである。もっとも、採用側や上司側・当局側は、応募者や部下職員を競争させることができるが、採用側・上司側・当局側そのものの競争性が確保されるとは限らない。もちろん、これらの担い手も職員であれば、競争は可能である。しかし、階統制を上方に遡っていけば、最上位者の選抜をする人間又は機関に競争性を確保することは難しい。つまり、職員最高職をめぐって職員間の競争はあっても、最高職を誰が決めるのかという問題がある。選挙で当選した政治家が、行政職員の最高職を決めることができる。とはいえ、これは競争性の確保という問題の無限後退である。政治家間の競争はある。反面、政治家を選出する住民自体には、何の競争性もなく、要するに愚民が間違った選抜決定をする可能性はある。
 また、競争入札は、受注を希望する民間企業間で競争させることで、官公需の受発注を市場化するものである。もっとも、単に民間企業が競争するだけで、発注者側の行政が独占的地位を維持するのであれば、むしろ弊害が増えよう。簡単にいえば、民間企業は発注者である行政職員に、営業として金銭その他サービスによる接待を繰り広げる。これは贈収賄である。贈賄の多い民間企業が、効率的・効果的な財・サービスの納入をしてくれるとは限らない。あくまで、民間企業間の競争は、効率的・効果的な財・サービスをめぐる競争でなければならない。
 発注者である行政職員が、最善の提案・事業者を選択すればよいだけである。しかし、独占的な地位にある発注者たる行政職員が、適切な受注者を決定できるとは限らない。競争入札とは、入札価格が一番低額な民間企業を機械的に選定することによって、発注者たる行政職員に見抜く能力がなくても、競争が成立することを目指している。強制競争入札(CCT)とは、競争入札を必ず行わせる仕組みである。というのは、何を競争入札に付し、何を競争入札に付さないかを、発注者である行政職員が選定できるのであれば、競争性が確保されるとは限らないからである。
 もっとも、価格競争だけで良い受注者を選定できるとは限らない。同じ質量の財・サービスが必ず納入されるならば、価格競争だけでよい。しかし、現実にはそうとは限らない。「安かろう悪かろう」のおそれはある。それを防ぐためには、発注者は、仕様書や契約により、納入される財・サービスの質量を適切に指定し、履行確保(納入確認・検収)しなければならない。とはいえ、競争入札は最善の民間企業を選定する能力がないような行政職員を前提にしている。ならば、発注者が適切に入札業務を行えるとは限らない。

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