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2025.08.25 リーガルマインド

第16回 「司法による判断」から内部自治のあり方を考える

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そもそも裁判所が介入すべきなのか

滝口〔弁〕 そもそも、裁判所が何でも判断できるのかという疑問はあります。
松尾〔弁〕 そうですね。例えば、大学の授業の単位認定が適切かどうかを裁判所が判断できるのか。これに裁判所の判断が及ばないのは、まあそうかなという気がします。
渡邉健太郎〔弁〕 同好会での退部処分を争うようなケースでは、裁判所としては、法律上の争訟ではないとして却下するようにも思われます。裁判で争うのであれば、この点をじっくり検討しておく必要があるでしょう。
加藤たくま〔議〕 今はエビデンスに基づいて政策を決定していく時代ですが、一昔前までは、感情論やパワーバランスで物事が決まっていたこともあったと思います。例えば、学校の統廃合では、廃止されるのは選出議員がいない地域だったりします。そのように決まった政策であれば、裁判所に異を唱えたいことはあるでしょう。
大倉たかひろ〔議〕 政党の場合ですと、しっかり議論しながら進めていくのが大前提です。議論での解決が大切です。党員が懲罰を受ける場合であっても、本人が認めた上での除籍処分ということになります。裁判所の介入がそもそも必要なのかなという感覚はあります。
加藤〔議〕 ある政党では、党紀委員会による判断に不服があるときには、政党代表者へ再度の審査を請求する場合があります。しかし、代表者は判断結果を出すには出しますが、そのときに判断の理由が明らかになりません。判断の理由が分からないというのは、違和感がないわけではありません。
滝口〔弁〕 ほかにも同じようなケースはありますか。
加藤〔議〕 百条委員会が設置されるケースがあります。本来、議会に解決が委ねられているわけですし、必ずしも司法を頼るシチュエーションではありません。ただ、百条委員会というのは判決文のように分かりやすい事実認定がされるわけではないため、うやむやになりがちとも思えます。
金岡〔弁〕 たとえ百条委員会であっても、公益通報が争点になることもあるでしょう。このような場面にまで内部自治を持ち出すことは濫用的ではないかと思います。

地方議会に裁判所が介入するのは妥当か

滝口〔弁〕 仮に、明らかにおかしい議会の議決があったとして、議員の立場からすると、裁判所が議会の議決をひっくり返すというのは許せるのでしょうか。
加藤〔議〕 議決というのは、たとえ反対票を投じた場合であっても、それは自分たち議員で決めたことです。それに司法権が及んで勝手に変えられるというのは、確かにおかしいですね。議員個人が議決に不服があるときには、ひっくり返してほしいという心情を抱くのは分かりますが。
滝口〔弁〕 議会の内部で解決する方法はあるのでしょうか。
加藤〔議〕 議会の議決等に異議がある場合には、首長が審議と議決のやり直しを求めることになるでしょう。
金岡〔弁〕 地方自治法が定める「再議」ですね。
加藤〔議〕 私が最近力を入れていたのは、中野サンプラザの建替え問題です。人件費や材料費の高騰などがあって、議会で議決した当時の予算から大幅に上昇し、建物の用途も変更されました。内外の大きな声があり、メディアにも取り上げられました。結果的に区は見直しましたが、こうした声が上がらなければ、そのまま進めていたと思われます。
金岡〔弁〕 その場合には「事情変更」が起きているかどうかですね。いったん議決した際の前提となる状況が大きく変化し、実情にそぐわないときに再度審議・議決することはあるでしょう。

最高裁による判例変更

渡邉〔弁〕 近年では、最高裁はこれまでの判例を変更し、地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は司法審査の対象となると判断しました(最大判令和2年11月25日民集74巻8号2229頁)。地方議員の歳費が争点になった地方議会における処分について判断していますが、この事件では、お金にかかわる問題であったのが大きかったものと思われます。
松尾〔弁〕 私見としては、市民法秩序の中で、その人にとって権利として重要なものは保護していこうという理念があるのだと思います。

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