2025.08.25 政策研究
第25回 「地域コミュニティの基本ルール」と議員
(補)「コミュニティの『内』と『外』の関係」と「『人間関係の蓄積(ソーシャル・キャピタル:社会関係資本)』の関係」
コミュニティに入ればコミュニティ内では関係が深まり、コミュニティ外との関係が薄まるおそれがあります。そして、コミュニティから外れればコミュニティ内では関係が薄まり、多くの関係が均等になるのが一般的ではないでしょうか。そのため、コミュニティに入りコミュニティ内の関係を深め、かつ、コミュニティ外との関係を深めるには努力が必要です。
今日では、これと似たようなことが、「リアルなもの」と「インターネットを活用したもの」に起きています。リアルな少人数の接触は、インターネットによる多人数の接触よりも、人間関係が高まります。では、「リアルな多人数の接触」と、「インターネットによる少人数の接触」は、どちらの方がより人間関係が深まり、接触の効果が高まるでしょうか。もちろん、「どの程度の人数なのか」「〈ファシリテーターやフォロワー〉の力量の高低」「ブレイクアウトルーム(Zoomの会議中に参加者を複数の小部屋に分けることができる機能)を使っているか」「連続の複数回ある接触か」など条件により、接触の効果は変わります。また、接触する当日だけでなく、当事者間における従前からの人間関係の蓄積(ソーシャル・キャピタル:社会関係資本)の大小によっても接触の効果は変わります。
結び
本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「『地域コミュニティの基本ルール』と議員」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。
- 日本の地域コミュニティを取り巻く環境は、経済的・社会的・自然環境的にも厳しくなっています。
- 地域コミュニティの基本ルールをコミュニティ自身がつくり運営していくことが求められるとともに、地域コミュニティには、身近な自治体政府(議会、行政)との間にも、基本ルールが必要になります。
- 意識、感情を乗り越えるためには「英知」が必要となります。
- 地域資源(=地域コミュニティ資源)は有限であるということが分かります。
- 「コミュニティづくり」において「コミュニティづくりのルールづくり」が必要です。
- 地域コミュニティの基本ルールで「定めること」は、「自由を得るためには、個人の勝手きままなことを制御する事項」であり、地域コミュニティの基本ルールで「定めてはならないこと」は、「人に『一方的なもの』『押しつけられたもの』『非効率なもの』『手段に問題があるもの』『役に立たないもの』『空虚なもの』と思われる事項」です。
- 「コミュニティづくり」とそのための「ルールづくり」は、現実社会の理想と現実の距離を縮め、埋めていくという作業です。そのため、コミュニティづくりとそのためのルールづくりは、未来へ向けて主体的・意図的に歩き出すことが必要です。
- ときには、あるいは定期的に、「コミュニティづくり」とそのための「ルールづくり」を見直していくことが求められます。
- 〈地域コミュニティの基本ルール〉である「ヒトづくり」においては、〈実践的な技(技術)〉と〈人間性という心(=気持ち:リーダーシップ)〉の両面を持つ人をリーダーとして選出するという「ルール」が求められます。また、地域コミュニティのフォロワーには、フォロワーとしての〈実践的な技(技術)〉と〈人間性という心(=気持ち:フォロアーシップ)〉の両面を持つ人がフォロワーになるという「ルール」が求められます。
- 自助の比率を下げる方向で「自助」「互助・共助」「公助」のバランスを変えざるをえないのではないでしょうか。このことが、個人一人ひとり・家庭・地域コミュニティに安心と安定をもたらします。「自助」「互助・共助」「公助」のバランスを変えるためには、〈「自助」「互助・共助」「公助」のルール〉を改めてつくり、実践し、見直す(改善する)ことが必要です。
- 「『地域コミュニティの基本ルール』の向上」を目指すためには、基本ルールの突合表をつくり、ある程度は(=関心のある人は)誰でも機械的にチェックできることが必要です。突合表があれば、誰もが比較的容易にそのルールをチェックし、間違いに気がつくのではないでしょうか。
- 間違ったルールは、地域に問題を起こす帰結となります。
- 地域コミュニティでの人々の取組みは、ポジティブに捉えると自治体や国や国際機関に好影響を与え、関係者や市民をいい意味で変容させることができます。
- 身近な政府の議員である自治体議員には、地域コミュニティのために、抑制的立場を維持しつつも力を発揮することが求められています。
- コミュニティに入りコミュニティ内の関係を深め、かつ、コミュニティ外との関係を深めるには努力が必要です。
■参考⽂献
◇相川康子(2022)「地域自治の現状と課題」中川幾郎編著『地域自治のしくみづくり 実践ハンドブック』学芸出版社、10〜23頁
◇斎藤幸平(2023)「はじめに──今、なぜ〈コモン〉の『自治』なのか?」斎藤幸平=松本卓也編『コモンの「自治」論』集英社、3〜8頁
◇田村明(1987)『まちづくりの発想』岩波書店
◇藤井誠一郎(2024)『ごみ収集の知られざる世界』筑摩書房
