2025.08.25 政策研究
第25回 「地域コミュニティの基本ルール」と議員
コミュニティづくりの「つくる」と「ルールづくり」
田村明は、コミュニティづくりの「つくる」について、「作る」とは、新しくつくるだけでは、風土と歴史の上に立ってこれを修復したり、守ることも含まれるとし、「つくる」対象としては、モノとヒトが重要だが、さらに、これを分けると、次の七つ(の対象要素)を挙げることができるとし、①モノづくり、②シゴトづくり、③クラシづくり、④シクミづくり、⑤ルールづくり、⑥ヒトづくり、⑦コトおこし、を挙げています(田村 1987:54-55)。そのように、田村は「コミュニティづくり」において「コミュニティづくりのルールづくり」が必要であることを主張しています。
「ルールづくり」を起点として見れば、他の「①モノづくり、②シゴトづくり、③クラシづくり、④シクミづくり、⑤ルールづくり、⑥ヒトづくり、⑦コトおこし」にも、ルールが必要です。例えば、「①モノづくり」では、モノをつくる前に計画や構想を考えるルールが求められます。「③クラシづくり」では、生活の矛盾や衝突を緩和し、スムーズにするルールが重要です。「⑤ルールづくり」では、情報公開(情報共有)や参加という「ルールづくり」のためのルールが肝要であり、「⑦コトおこし」では、人々を交流させ、人を育てるルールが大切です。
地域コミュニティの基本ルールで「定めること」「定めてはならないこと」
田村は、都市の本質は一人で生きられないことにあるとし、だからこそ共同して、まちを運営しなければならない。ルールも、都市も共同で動かすシクミもつくらなければならない。それが地域組織(=地域コミュニティ)〔( )内は筆者補〕であり、地域の自治体である。ルールやシクミをつくることは、個人や個別主体から見れば、その自由度の一部を制限されることである。だが、制限されるからこそ、他の点では他人に拘束されない自由が得られるといっています(田村 1987:99-100)。
ところで、〈ある「ルール」〉には、〈その「ルール」を信頼する人〉と、〈その「ルール」を信頼しない人〉がいます。しかしながら、ルールを信頼しない場合であっても、ルールが不要というわけではなく、ルールが不十分だったと捉えることが妥当であると思われます。なぜなら、人々が都市での自由を得るためには、個人の勝手きままなことを制御する自前のルールが必要だからです。そのため、ルールは、「一方的なもの」「押しつけられたもの」「非効率なもの」「手段に問題があるもの」「役に立たないもの」「空虚なもの」であってはなりません。
ということは、地域コミュニティの基本ルールで「定めること」は、「自由を得るためには、個人の勝手きままなことを制御する事項」であり、地域コミュニティの基本ルールで「定めてはならないこと」は、「人に『一方的なもの』『押しつけられたもの』『非効率なもの』『手段に問題があるもの』『役に立たないもの』『空虚なもの』と思われる事項」です。
〈「コミュニティづくり」とそのための「ルールづくり」〉と見直し
「コミュニティづくり」とそのための「ルールづくり」は、現実社会の理想と現実の距離を縮め、埋めていくという作業です。そのため、コミュニティづくりとそのためのルールづくりは、成り行きに任せるのではなく、未来へ向けて主体的・意図的に歩き出すことが必要です。
そして、ときには、あるいは定期的に、「コミュニティづくり」とそのための「ルールづくり」を見直していくことが求められます。見直しに際しては、表3のような留意点を挙げることができます。
出典:筆者作成
表3 「づくり」(=〈「コミュニティづくり」とそのための「ルールづくり」〉)の見直しの留意点
