2025.08.25 政策研究
第25回 「地域コミュニティの基本ルール」と議員
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
本稿では、「『地域コミュニティの基本ルール』と議員」と、これらに関する事項等について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。
〈地域コミュニティを取り巻く厳しい環境〉と〈求められる「地域コミュニティと議会」の基本ルール〉
日本の地域コミュニティを取り巻く環境は、経済的・社会的・自然環境的にも厳しくなっています(表1参照)。
出典:筆者作成
表1 地域コミュニティを取り巻く環境の悪化要因
そのような状況では、地域コミュニティの基本ルールをコミュニティ自身がつくり運営していくことが求められるとともに、地域コミュニティには、身近な自治体政府(議会、行政)との間にも、基本ルールが必要になります(表2参照)。
出典:筆者作成
表2 環境の悪化を防ぐ自治体政策(具体的な事業)
「英知」から見えてくるもの
人は地域コミュニティの中で生活しています。そこでは、地域コミュニティに助けられることがある一方で、地域コミュニティが当人にとって不都合に働くこともあります。例えば、地域コミュニティに現存するルール・制度は、地域コミュニティの成員にとっては金銭負担や役務提供を要求され、成員にとってルール・制度は、「抑制(縮小)したい」「反対だ」「非協力にならざるをえない」「無関心だ」という意識、感情を生み出します。そのような意識、感情を乗り越えるためには「英知」が必要となります。英知には意思と行動も含まれます。
では、「『英知』がどのように蓄積されるか」を考えてみましょう。人が暮らしていく上では、ごみの収集所への排出や、排出時のごみ収集所の当番を担うことがあります。各家庭のごみ出し人は、ごみの収集所ないしそこに向かう道路で、地域の人々と顔を合わせ、挨拶をすることになります。そのため軽重はありますが、互いに近隣コミュニティの住人であるという意識を持ってきます。また、ごみの収集活動を通して、「現代の清掃事業は、可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみのいずれであろうが、①収集・運搬、②中間処理、③最終処分、という流れで進められていること」(藤井 2024:17)を知ることができます。
そして、ごみ収集活動を通して、ごみの3R(Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル))という考えが広がります。ちなみに、リデュースは発生するごみの量を減らすこと、リユースはものを繰り返し使うこと、リサイクルは使い終えたものを再生利用することを示しています。この三つの取組みは順番も大切で、環境負荷が少ない順に優先度が高く設定されています。例えば、リサイクルをする場合、再資源化処理をするときにもエネルギーが必要となり、二酸化炭素が排出されてしまいます。そのため3Rの中で最も重要なのは、できるだけ廃棄物を排出しないリデュースです。次に、使ったものを再使用するリユース、最後に資源を再利用するリサイクルという順番で、3Rの取組みは推進されています(最終処分場は無限ではないという意識は極めて重要です)。
このように考えると、食品ロス問題や消費期限(賞味期限)問題、コンクリート材やインターロッキングブロックとして残渣(ざんさ)をリサイクル利用すること等、私たちの生活は〈消費〉〈環境〉〈産業〉にわたり連鎖しています。ここからは、地域資源(=地域コミュニティ資源)は有限であるということが分かります。
