青森県環境エネルギー部環境政策課/財務部税務課
1 条例制定の趣旨・概要
青森県は世界遺産・白神山地や八甲田山に代表される美しく豊かな自然環境に恵まれており、この地で暮らす私たちは、この雄大な自然とそこに息づく動植物等や、人が自然と関わる中で育んできた多彩で独自性に富む文化や伝統など、私たちの生活に潤いと安らぎを与えてくれる「かけがえのないもの」を代々受け継いできました。
これらは県民共通の財産であり、今を生きる私たちだけがその恵沢を享受するのではなく、良好な状態で未来の世代に継承していく必要があります。
また、地域から地球全体に視点を転じると、地球温暖化の急速な進行により地球環境が危機的状況にあるとの警鐘が続いており、世界各地で気候変動の影響による異常な高温や大雨による災害の発生などの報告が後を絶たない状況にあります。
こうした中、本県に賦存する再生可能エネルギー源のポテンシャルを活かして再生可能エネルギー発電施設(以下「再エネ施設」という)の導入を促進していくことは、地球温暖化対策への寄与の観点から極めて重要であるとともに、我が国におけるエネルギーの安定供給の観点からも重要度が高いものであることを念頭に置いて、本県では再生可能エネルギーの推進に向けた取組を進めてきたところです。
本県は風況が良好な場所が多いことから、風力発電を中心に再エネ施設の立地が進んできましたが、新たな再生可能エネルギー発電事業の計画が進められる中で、地域においては自然環境の保全をはじめとする様々な問題が顕在化するようになってきました。
このような状況を踏まえて、自然環境等と再生可能エネルギー発電事業が持続可能な形で向き合い、共存共栄していくためのルールづくりの方向性を示すものとして、令和5年9月に「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」(以下「共生構想」という)を発表しました。
共生構想では、自然環境等との共生を前提に、県内の電力需要相当量を賄うことが可能な規模の再エネ施設の導入を目指すこととし、自然・地域と再エネ施設とが共生することのできる新たな仕組みづくりの検討に着手する旨を示しました。
これを踏まえて、学識経験者等による「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生制度検討有識者会議」を設置し、ご意見を伺いながら、「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例」(以下「共生条例」という)及びその政策効果・実効性を補完するための「青森県再生可能エネルギー共生税条例」(以下「共生税条例」という)からなる「共生制度」を制定したものです。
〈共生条例について〉
(1)基本的な事項
① 対象事業
再エネ施設(出力が2,000キロワット以上の太陽光発電施設又は500キロワット以上の風力発電施設)を新設又は増設する事業(海域又は建築物に設置されるものを除く)。
② 条例の概要
共生条例は、次の二つの手法を組み合わせることにより、現在の世代が未来の世代に引き継ぐべき自然環境等を保全することを前提に、持続可能な形で本県における再生可能エネルギーの円滑な導入を促進するものです。
ア 地域区分の設定(ゾーニング)
広域的な視点から守るべき環境を保全するため、本県の再生可能エネルギーに対する保護・保全の地域区分をあらかじめ明示し、設置計画の立案段階から地域区分に応じた配慮を求めます。
イ 合意形成の手続(合意形成プロセス)
再エネ施設の設置に当たり、事業者に対して地域との合意形成に向けた意見交換会及び説明会の開催を義務付けます。

