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特集 今こそ見直す予算審議ー地方議員に求められる視点とは―

2025.07.25 予算・決算

「財政が厳しい」とはどういうことか

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「財政が厳しい」という言葉の正体は

 これまでの話を1枚のグラフにまとめると、図1のようになります。上の折れ線グラフが自治体で自由に使途を定めることができる一般財源ですが、4千億円前後で今後も推移し、大幅な伸びは見込めません。
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図1

 一方、歳出の方を見ると、人件費、公債費は高止まり、社会保障費は10年間で3割ほど伸びていきます。また、過去の政策決定のランニングコストである経常的経費は、施策事業をやめるということを新たに政策決定しない限り昨年度までと同様に実施することとなるためこれを同水準で置き、公共施設の老朽化に備える長寿命化に要する経費まで見込んだとしても、棒グラフすなわち義務的経費を含んだ経常的経費に要する一般財源は、その年度に見込まれる税収等の一般財源を下回ることから収支不足で予算が組めない、赤字決算になるなどの非常に危険な事態ではありません。では、何が足りなくなることをもって「財政が厳しい」といっているのでしょうか。
 それは図左上に示している棒グラフと折れ線グラフの隙間、いわゆる「政策的経費」と呼ばれる施策事業に充当する一般財源が不足するという意味なのです。
 「政策」とは、現にある社会課題を解決するため、行政の取組として経費をかけて取り組むことで、そのために必要な経費を「政策的経費」と呼んでいます。
 当時の福岡市の場合、多くの自治体でも同じ現象が起こっているのですが、過去の政策決定のランニングコストが増大することで、大幅な伸びが期待できない一般財源の範囲内では発生する社会課題に対応するための新たな政策、施策、事業に投じるための財源が不足する、という状態だったのです。

「政策的経費」を確保しなければいけない理由

 ちょっと待ってください。お金が足りないのなら新しい施策事業などしなければいいのではないですか。今までやってきたことを継続するだけなら収支の均衡は保てるのでしょ。そんな声が聞こえてきます。
 確かに先ほどの図を見ると、伸びが見込めないといわれる一般財源の範囲内で人件費も公債費も、今後増加が見込まれる社会保障費も払えますし、過去の政策決定のランニングコストである経常的経費も、公共施設の老朽化だって対応できます。グラフを見ればお分かりのとおり、折れ線グラフで示す収入と棒グラフで示す経常的支出が逆転し均衡が崩れるということは推計されていないのです。
 不足するのは、図で示している棒グラフと折れ線グラフの隙間、すなわち「政策的経費」ですが、自治体にはこの政策的経費を何とか捻出しなければならない理由があります。皆さんお分かりでしょうか。
 それは5年後、10年後に今よりももっとよいまちにすると市民に約束しているからです。この約束が自治体の総合計画、基本計画、マスタープランと呼ばれているものです。皆さんの自治体にもありますよね。5年後、10年後にこんなまちになると宣言し、今はできていないことが10年後にはできている、という将来像を市民の皆さんと一緒に考え、議会で議決しています。この実現は市民との重要な約束事なのです。
 しかしながら、先ほどの図でも分かるように、市民と約束した将来像の実現のために充てることのできる財源が先細っていく。そのため、過去の政策決定を見直し、そのランニングコストを削減し、新たな政策推進の経費に充てる必要がある。これが「財政健全化」という取組なのです。

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