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2025.07.25 政策研究

第24回 地域コミュニティと議会

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結び

本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「地域コミュニティと議員」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1.  コミュニティを形成する根底は生活の場における地域住民の相互信頼です。
  2.  コミュニティが十全に機能するためには構成員が社会におけるルールを厳守することが要求されます。
  3.  コミュニティは、正しい地域の自主的責任体制に基づく主張の場となり、今日われわれの日常生活のより所となって、現代文明社会における人間性回復のとりでとしての機能を確立しなければなりません。
  4.  行政機構の中に住民参加から生ずる声を取り入れる組織が体系的に確立していません。
  5.  住民のコミュニティ形成のために必要な条件を整備することが新たな行政の課題となるべきことに十分の考慮が払われなければなりません。
  6.  リーダーに人を得ることはコミュニティ形成の最大の課題でなければなりません。
  7.  コミュニティ形成の努力を支援し成果あるものとするための行政面における対応が必要です。
  8.  充実したコミュニティの活動内容をもつことが重要です。
  9.  人々はある時には孤独を愛し、他の時には集団的帰属を求めます。
  10.  「地域住民の相互信頼」や「行政と住民に求められる対話」は、人の生活にとって重要なことです。
  11.  コミュニティは、いうまでもなく、住民の自主的な活動のなかから生まれ育ってくるものではありますが、同時にそれを促進するための自制的な最小限の行政施策をも必要とします。
  12.  コミュニティ施策は、他の行政施策と並列的な新規のものではなく、すべての行政を円滑に推進できるようにするための一種の基盤的行政として位置づけられるべきものなのです。
  13.  コミュニティ施策の実践への大きな前進を生み出したのは、この小委員会報告書を受けて立った自治省のモデルコミュニティ構想でした。
  14.  モデルはたとえ失敗例であってもよく、その失敗の原因を検討して他山の石として利用してもらうことに意義があります。
  15.  コミュニティ政策は「基本性」「難解性」「定義多様化の必然性」「求められる長期的視点」を持つといえます。
  16.  今日でも、報告(「コミュニティ─生活の場における人間性の回復─」)の考えは、望ましい方向を向いているといえそうです。
  17.  地域コミュニティに対する行政支援は、市民自治への介入・統制ではなく行政と市民団体との対等な関係をもたらすものでなければなりません。
  18.  各地の自治体では、独自のルールや原則を定めており、どれも共通に「対等性」が掲げられています。
  19.  地域コミュニティにおける「議会の課題」としては、「行政コード(規定、規則)」を踏まえて「議会コード」をつくり実践することが挙げられます。
  20.  地域コミュニティないし市民個々が、コミュニティにおける議会制御や行政制御を行い、さらには議会や行政が市民参加のもとに、コミュニティにおける地域コミュニティないし市民個々を制御することが重要です。換言すれば、トータルに見てそれらのことを「自治体コード(仮称)」として定め実践することです。
  21.  信頼できる議員の後継者は、議会や現職議員、そして市民や地域コミュニティ、さらには「主権者教育」推進団体や政党等、多様な主体が育てていく必要があります。
  22.  災害についての知識・技術・訓練がなくては、地域コミュニティで「即興」(事前の準備なく行動すること)を実現することは困難です。
  23.  様々な状況に対応できる人材育成が不可欠であること、そのときの状況に合わせて組織を変革させ、若しくは新たな組織を生み出すという「創造性」と「マネジメント力」が地域コミュニティには求められます。
  24.  災害発生時にも必要な業務が継続できるように、災害時にどの業務を優先させるのかなどを定める計画である議会の「業務継続計画(BCP)」を踏まえた上で、議会の保有可能な「議会資源」(議会の権能・権限を果たすために必要な議会としての自治体政府資源〔政策資源〕:人員・財源・権限・情報・時間等)と、議会と連携協力する団体等の保有可能な「議会連携資源」(議会と連携協力する団体等の資源〔政策資源〕:人員・財源・権限・情報・時間等)に応じた「即興」で、どの程度実現できるかを訓練することが必要です。
  25.  災害対応時における地域コミュニティは、地域という「公共」のために官民問わず多様な主体をつなぎ、市民の合意形成を行う主体(アクター)となっています。
  26.  災害時の地域コミュニティを議会においても自分のこととして想像し、アイデアを考え、それを検証することが大切です。
  27.  地域コミュニティは、当該地域コミュニティと連携協力する団体等と力を合わせ、「地域コミュニティ資源」と、「地域コミュニティ連携資源」を活用しています。
  28.  議会はコミュニティや行政の限界そして市場の失敗を補完します。逆に議会の限界や失敗はコミュニティや行政そして市場から補完されることになります。
  29.  コミュニティはもとよりコミュニティと補完関係にある議会や行政そして市場の行動にも、他者に対する予測可能性が高いことが望まれます。ただし、その予測可能性が予定調和によるものであってはなりません。
  30.  偽りのない誠実な行動が成就の可能性を高めるためには、熟慮と工夫が必要になります。また、コミュニティの構成員がお互いの持っている能力を活用し、相互に支援することが重要になります。
  31.  議員には、「リーダー構成員が持っていることがふさわしい能力」だけでなく、「地域の誰もが持っていることがふさわしい能力」が求められます。
  32.  政策課題の発生源は、市民の暮らしにあり、政策は、必ず個人の発想を起点にするものです。
  33.  苦労はやがて人々の幸せにつながると思い、志を高く持ち、闘い続けることが必要です。


■参考文献
◇安部浩成(2022)『自治体職員のための市民参加の進め方』学陽書房
◇阿部昌樹(2022)「地域自治の法理論」中川幾郎編著『地域自治のしくみづくり実践ハンドブック』学芸出版社、39~64頁
◇今井照(2017)『地方自治講義』筑摩書房
◇国民生活審議会調査部会コミュニティ問題小委員会(1969)『コミュニティ─生活の場における人間性の回復─』
◇阪本真由美(2025)『地域が主役の自治体災害対策 参加・協働・連携の減災マネジメント』学芸出版社
◇佐藤竺編著(1980)『コミュニティをめぐる問題事例』学陽書房
◇瀧本浩一(2023)『第6版 地域防災とまちづくり─みんなをその気にさせる災害図上訓練』イマジン出版
◇土山希美枝(2018)「政策議会の政策過程と『争点資源』開発」廣瀬克哉編著『自治体議会改革の固有性と普遍性』法政大学出版局、103~127頁
◇中川幾郎(2022)「地域自治システムのめざすもの」中川幾郎編著『地域自治のしくみづくり実践ハンドブック』学芸出版社、24~38頁
◇松下圭一(1991)『政策型思考と政治』東京大学出版会

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