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特集 今こそ見直す予算審議ー地方議員に求められる視点とは―

2025.07.10 予算・決算

現状の予算審議の問題点~この10年間に使った予算で街はどう変化したか?~

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5 現状の予算審議の問題

 これまで、地域経営の視点で考えると行政は経営型にはなっていないのではないかということを述べてきたが、議会が審議する際にも大きな問題点がある。それは、議会が縦割り型のチェックになっているという点だ。
 役所の組織は、総務部、企画部、建設部、福祉部、産業部、市民部、教育委員会……等々、部や課で構成されているが、それらは、国の省庁の構成にひも付いている。総務部は総務省、建設部は国土交通省、産業部は経済産業省、福祉部は厚生労働省……という具合だ。国の各省庁は、それぞれ管轄する範囲の政策項目を所管しており、省庁同士が連携することは極めて少なく、縦割りのまま政策は進められることが多い。
 例えば、少し前に「6次産業化」という取組みがあった。1次産業×2次産業×3次産業=6次産業ということで地域産業の活性化を図ろうという取組みだった。1次産業を所管するのは農林水産省、3次産業は経済産業省だから、本来、6次産業を目指すのであれば農林水産省と経済産業省とが合体して取り組むべき事案であったと考える。しかし、合体することなく、それぞれに6次産業化に向けたメニューを用意し、それぞれに活動したため、当初想定していたような6次産業化は起こらなかったし、地域は活性化しなかった。組織の縦割りの弊害が出た典型的な事例といえる。その国の各省庁にひも付いている市町村行政の各部署は、いわずもがな縦割りになり連携は生まれにくい。
 しかし、議会の委員会は、その縦割りの行政に合わせた構成になっている。例えば、総務常任委員会は総務部関係、厚生常任委員会は福祉部関係、文教委員会は教育委員会関係……という具合だ。
 前述のとおり、まちづくりは経営という観点が重要であるため地域資源の価値を最大化して目的や目標を実現していく必要があり、組織横断的に総合的に進めていくことが望ましい。すなわち、決算型の視点で委員会は実施されていかなければならないが、予算型の国の組織に合わせた行政組織で実施する事業や政策を審議する議会の委員会も、縦割り型になっている可能性が高い。
 執行する行政もチェックする議会も双方が縦割り型の視点では、組織横断的な視点が入りづらく、地域資源の価値の最大化は図りづらいのではないだろうか。

6 思い込みの打破

 現実的に、あるいは現行制度に沿って考えると、常任委員会が審議する部署の構成を入れ替えたり統合するというのは難しいだろう。しかし、例えば「子育て支援」という視点で考えれば、「子育て支援=福祉課や教育委員会」だけでなく、公園を維持管理している建設課や子育て世帯を対象とした税の政策なら税務課等、子育て支援という政策一つを考えても全庁が関わることができるはずだ。まちづくりは地域経営の視点が重要、すなわち、総合力であるということを考えると、既存の活動や枠組み、制度や仕組み等に問題を発見できるのではないだろうか。
 筆者は、「行政とはこういうものだ」、「議会とはこういうものだ」、「委員会とはこういうものだ」、「予算審議とはこういうものだ」という思い込みこそが、まちづくりを機能させない最大の抵抗勢力であるように考えている。
 社会はすさまじいスピードで変化している。人の価値観の多様化もまた同様だ。このような日々変わっていく社会の中で、数十年も前からの仕組みや制度が最適とは考えづらい。 思い込みの打破を常に意識し、既存の事実を疑ってみるという思考を持つよう努めたい。

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