4 予算主義と決算主義
予算がありたい姿を実現するためのツールであるならば、ありたい姿に近づけているのか? 実現できたのか? ということに関心は移る。予算は「何かを始めるための前段階」であるため、実現できたかどうかは「決算」に当たる。決算は事後の結果であるため、決算が地域経営の視点でいえばゴールとなる。
しかし、行政では決算よりも予算の方が重視されている。それは、議論にかける時間と体制を見れば明らかである。
予算は、早いところでは夏頃から来年度の方針や枠組みが話し合われ、秋頃から本格的な議論に入り、年明け頃にまとめられていく。およそ、全職員が自分の担当業務を中心に来年度に向けて検討を始め、最後は全庁的に議論し首長の最終判断まで考えると、役所内全体で半年近く(短くても数か月)の間、予算について議論される。この予算案は議会でも熱心に議論される。
一方、決算は行政の制度の特性もあり1年半遅れで数値がまとまってくるため、関心が薄くなるのか、「もう終わったことだから」という声が議会からも聞こえてきそうなほど、予算審議に比べて議論が低調となる。役所内でも関わる職員の人数や体制は予算とは異なり、担当課中心のとりまとめ事務となることが多い。
「どうなったか」、「どこまで進んだか」という決算に関心が低く、「何をやるか」、「どのようにやるか」の予算に関心が高いのだから、目先の手段や手法に意識がいきがちになるのは明白だ。
本来、「実行してみた結果がどうであったか」、「なぜそのような結果になったのか」等をしっかりと検証して次のフェーズへ移行していくのが望ましいが、振り返りもほとんどしないまま来年度に「どうやるか」という視点だけを持っていくのだから、改善点も修正点も見いだすことなく同じことが繰り返し実行されているケースも容易に考えられる。
経営とは「ありたい姿を描いて実行していくこと」、すなわち「ありたい姿に近づけたかどうか」を見ることが重要となり、そのことから考えると、経営とは決算重視となるのだが、行政のサイクルは経営型になっていないのではないかと考えられることの方が多い。