2025.06.25 政策研究
第63回 経営性(その3):三セク経営
総務省の第三セクター経営に関する方針
1980年代頃から急増した第三セクターは、バブル崩壊と日本経済低迷の中で、徐々に経営問題を引き起こしてきた。さらに、小泉政権(2001~2006年)の構造改革や三位一体改革(2004~2006年度)によって、地方財政の抑制が続き、自治体本体の財政危機も生じていた。それが「弱い環」から具体的に表面化したのが、夕張市の財政破綻(2006年6月20日表明)。そのような状況の中で、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(いわゆる「健全化法」)が2007年に制定され、自治体本体の債務調整を認めず、歳出削減によって財政再生を図る方針を再確認した(23)。
この間、総務省は「第三セクターに関する指針の改定について」(2003年12月12日付け)を発出していた。さらに、「経済財政改革の基本方針2008」(2008年6月27日閣議決定)において、「第三セクターの改革に関するガイドライン等に基づき、経営が著しく悪化したことが明らかになった第三セクター等の経営改革を進める」とした。「第三セクター等の改革について」(2008年6月30日付け総務省自治財政局長通知)により、2008年度までに外部専門家等で構成される「経営検討委員会」(仮称)を設置し、評価検討を行うとともに、その検討結果を踏まえ、2009年度までに「改革プラン」(仮称)を策定するなど、集中的な取組みを要請した。
また、「債務調整等に関する調査研究会」は、2008年12月5日に報告書をとりまとめた。上記健全化法が2009年4月に全面施行されることを見越して、第三セクター等の抜本的改革について、先送りをすることなく早期に取り組み、将来的な財政負担の明確化と計画的な削減に取り組むべきとした。その上で、改革推進のため事業の整理・再生を実施するときに、特に必要となる経費については、地方債の対象とすべきであると提言した。
そこで、健全化法の全面施行から5年間で、第三セクター等の抜本的改革を集中的に行えるよう、2009年度~2013年度までの間の時限措置として、第三セクター等の整理・再生のために特に必要となる一定の経費を地方債(「第三セクター等改革推進債」)の対象とする特例措置が決定された(2009年4月施行)。これを受けて、2009年6月23日付け「第三セクター等の抜本的改革等に関する指針」(技術的助言)を策定した。健全化法により、第三セクターに関する自治体の将来負担も、健全化指標に盛り込まれることになったからである。
同指針は以下のように示す。抜本的処理策の検討においては、採算性の判断をまず行う。その上で、抜本的処理策として、現状に至った経緯・経営責任・原因を明確にして、整理(売却・清算)又は再生を選択する。その場合には損失補償の履行が求められることがある。債務調整を伴う処理策もあり得るので、私的整理・法的整理のガイドラインなど一般的準則を活用する。処理策において新たな損失補償契約をすべきではない。第三セクターの債務処理に関して、自治体が代わって免責的債務引受けをすることは、既存の損失保証債務の範囲内で当該債務の短期かつ確実な履行のためなど、特別の場合のみに限る。また、首長などの個人保証がある場合には、個人の負担の限度を超えることにより処理策の阻害要因とならない範囲で、適正な債務調整をする。処理策のため、一定範囲内で、第三セクター等改革債の発行を認める。
第三セクター会社が存続するならば、公的支援の限界の政策判断が重要になる。同指針によれば、第三セクター等は独立した事業主体であり、その経営は当該法人の自助努力によるべきであって、原則として公的支援は、公共性、公益性を勘案した上で、その性質上当該法人の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費及び当該法人の事業の性質上能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費に限られるとする。つまり、単なる赤字補塡の公的支援は行うべきではない。また、公的支援を行う場合は、あらかじめ自治体と第三セクターの間で考え方を取り決めておくことが適当であるとする。
損失補償を行っている第三セクターが経営破綻すると、自治体は、当初予期しなかった巨額の債務(財政負担)を負うリスクもあるから、原則として損失補償は行うべきではない。特別の理由によりやむを得ず損失補償を行う場合は、あらかじめ損失補償契約の内容、損失補償を行う特別な理由・必要性、対象債務の返済の見通しとその確実性、健全化法の将来負担比率に算入される一般会計等負担見込額等を記載した調書を調製するべきである。
第三セクターに対する短期貸付けの反復・継続は、第三セクターが経営破綻すれば、当該年度の自治体の財政収支に大きな影響を及ぼすおそれがあるから、早期に見直すべきである。安定的な財政運営・経営の観点からは、本来、長期貸付け又は補助金で対応すべきである。第三セクターが経営悪化して将来負担比率への算入額が増大した場合には、債務履行義務が確定したときに備えて、リスクに応じて所要の引当金相当額を基金積立てするなどすべきである。首長などが私人の立場で保証することは、公職の立場における契約と混同されるおそれがあること、また、そもそも個人の支払能力を超えた保証は行うべきではないことから、避けるべきである。
以上のように、同指針は、私人による債務保証、自治体による損失補償は、結局、現時点で財政支出が生じないがゆえに、そして、将来に不確実な負債リスクになるがゆえに、否定的である。補助金について否定していないのは、現時点及び将来への財政支出は明確に一般会計に計上されるので、まだ予算(歳出)統制がしやすいからであろう。なお、長期貸付けは、破綻による負債リスクがないわけではないが、それほど否定的ではないようである。