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2025.06.25 政策研究

第63回 経営性(その3):三セク経営

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第三セクターの破綻処理

 第三セクターの経営問題が発生した場合、「暗黙の政府保証」を確固として維持しようと思えば、累積債務を自治体の負担で返済しなければならない。その上で、将来に向けて赤字を生み出さないように、経営改善するか、事業を縮小・停止・廃止するしかない。経営改善が容易でないのが第三セクターの事業領域であるならば、後者をするしかない。自治体の継続的な財政負担で事業の持続可能性が可能であれば、第三セクターの全体を廃業する必要はない。しかし、自治体が負担し得る範囲での赤字にとどまらないのであれば、破綻整理するしかないだろう(20)
 しかし、民間企業が破綻するように、第三セクターも株式会社であり、破綻し得る。株主としては自治体も民間投資家と同じであるならば、「暗黙の政府保証」は幻想にすぎない(21)。端的に、第三セクターも破綻・清算をすることもできる。第三セクターが清算されれば、出資者・株主である自治体も有限責任を負うが、その他の投資先・融資先・取引先もそれぞれに、多大な負担となる。特に、「暗黙の政府保証」があるとして、安易に融資・投資をしていた民間金融機関なども、大きな負担を被る。その場合には、債権の大幅放棄を含む債務調整による破綻処理が成り立つ可能性がある。完全な清算よりも、少しでも債権回収ができるのであれば、債務調整を呑(の)む可能性があるからである。借金は必ず返すべきという「借り手責任」がなくなるわけではないが、「貸し手責任」という観点からも、一定程度は債権放棄=債務調整は正当化される。
 このように、債権者による債権放棄=債務調整、すなわち、第三セクターによる「踏み倒し」が可能なのである。もちろん、自治体も、債権放棄をはじめとして大きな負担を負うので、得をするわけではない。自治体が第三セクターを通じて民間資金を集めた揚げ句に、第三セクターを「偽装倒産」する、というスキームにはならない。
 もちろん、自治体が第三セクターの経営を差配しているときに、倒産の全責任を負わずに、一定部分を他の債権者に負わせることができるならば、当該自治体の経営は無責任に傾くだろう。とはいえ、自治体も株主として、また、保証者・補償者として、何より、第三セクターの事業が行政目的(公益)に貢献しているとするならば、事業がなくなることにより、大きな不利益を被る。したがって、債権放棄・債務調整ができたとしても、自治体が過度にモラル・ハザードを起こすとは考えにくい(22)

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