2025.06.25 政策研究
第63回 経営性(その3):三セク経営
第三セクターの経営問題
第三セクター会社は、潜在的に経営が厳しい(18)。なぜならば、純然たる民間企業が事業経営を行って収支が採れるのであれば、第三セクターの登場の余地はない。あるいは、そのような第三セクター会社会は、民業圧迫として、批判され得る。また、新自由主義の潮流では、民営化・株式売却をしてしまった方が、行政としても有利だと考えられる。第三セクターは、採算がとりにくい事業について、行政が公益性などの観点から、事業持続を期待して、設立・経営されるのが自然であろう。とするならば、基本的には赤字経営基調になることが想定される。
赤字基調の第三セクターを経営するには、自治体は支援をせざるを得ない。民間資金の投資・融資などを誘引するためにも、単なる経営・採算の見込みや「夢」ではなく、行政の「裏書き」が必要である。それは、「錦の御旗」という精神的・象徴的又は風評的な支援では足りず、「暗黙の政府保証」といわれるような様々な実質的・現金的な支援が必要である。「暗黙の政府保証」があれば、第三セクターは経営難に陥っても、自治体が必ず救済する「はず」なので、出資・融資や取引をしても、民間企業は危険を負わない。それゆえに、安心して、又は、安易に、民間企業は第三セクターに付き合うことができる。
自治体又は関係個人は、しばしば、損失補償契約、債務保証契約を行い、付き合いのある民間企業に損害を与えない約束をする。当然ながら、第三セクターが経営難に陥っても、取引・出資している民間企業に対しては損失を補償したり、債務を確実に返済する。結果として、第三セクターの経営赤字の負担は、全て行政側に押しつけられてしまう。もちろん、自治体が補助金・操出金によって第三セクターの「明示の政府保証」をすることはできる。しかし、自治体の財政力は無限ではない。第三セクターが赤字を垂れ流し続ける限り、いずれ、自治体も「道連れ」で赤字財政に陥ってしまう。したがって、どこかで、自治体は第三セクター赤字支援の財政支出を止めなければならない。
そのためには、第三セクター会社の赤字経営が表面化しないように、行政は経営支援をしなければならない。例えば、自治体の人件費負担で人員を派遣する、賃借料なしで自治体の土地・資産の利用を認める、自治体から補助金・助成金を支出する、自治体が発注者・購買者として第三セクターから財・サービスを購入するなどである。
例えば、自治体から職員を第三セクターに派遣し、第三セクターは独自のプロパー人材を雇用せず、自治体の建物を第三セクターに無償利用させ、その建物を自治体の業務のために自治体が賃借し、自治体は第三セクターに賃料を支払う、などとなれば、当該第三セクターは必ず破綻しない。そもそも、自治体が自分の建物に自分で入居すればよいだけ、ともいえるので無駄そのものともいえる。が、ともかく、第三セクター会社が他の公益性のある事業で赤字体質になっているならば、当該第三セクターにとっては、自治体への貸し館事業は、「稼ぎ頭」として経営支援にはなる。
もっとも、自治体が発注して、それによって受注した第三セクター会社の経営が成立するならば、端的に民間企業に発注すればよいだろう(官公需)。第三セクターの受注部分は切り離して民営化できるし、あるいは、第三セクターではなく民間企業に対して発注を行えばよい。いずれにせよ、こうなれば、第三セクターの赤字部門だけが残され、経営問題が浮上してしまう。また、第三セクターの赤字の度合いが大きくなれば、自治体からの発注だけでは支えきれないことになろう。過大になれば、経営支援的な発注が表面化してしまう。自治体の「赤字」負担をどこかで止めなければならないことになる(19)。