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2025.06.25 政策研究

第23回 「話し合い」のルールと合意形成

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地域の未来と自分は変えられる、優しい「話し合い」には十分なプロセスが求められる

 過去は変えられませんが、「地域の未来と自分は変えることができる」といえます。平常時や非常時の話し合いで、地域の未来と自分は変えられるのではないでしょうか。人もコミュニティも、完全に過去を断ち切って、新しい人格やコミュニティに生まれ変わることは困難も少なくないですし、寂しいものです。だからといって、新しい自分になることを諦める必要もありません。少しでも地域の未来と自分を変えることは、有意義なはずです。
 地域や組織の未来を変えるには、関係者(例えば、利害関係者や一般市民等)の合意が必要です。しかしながら、今井照が指摘するように、合意は不満の積み重ねにおいて成立するものです。合意形成とは誰もが不満を抱える状態なのです(今井 2017:174-175)。問題は、選択された結果に対して、自分の意思とは違うけれど「しかたない」と納得するかどうかです。合意形成は必ず不満を呼びます。ただその不満を持った人も納得できるかどうかが合意形成の分かれ道になるのです(今井 2017:175)。では、納得するためには何が必要なのか。必要なのはプロセスです。あらかじめ定められたプロセスをきちんと踏んでいるか。公開の場で十分な時間をかけて議論が進められたか。その上で自分の意思を含んだ選択肢が少数者であれば、納得せざるをえなくなります(今井 2017:175)。地域の未来と自分を変えるためにも、話し合いには十分なプロセスが求められています。

「話し合いのルール化」と「評価・見直し」が議会と様々な主体や客体そして関係者をつなぐ

 「話し合い(聴き合い、訊き合い)」には、その帰結についても予測可能性が高いことが求められます。予測可能性が高くなるには、「話し合いのルール」があらかじめ定まっていることが必要です。そして、そのルールに従って「話し合い」を経験していることが大切です。そこには、「話し合い」さらには「予測可能な帰結(内容)」にも、安心の気持ちが生まれてくるでしょう。
 そのような「話し合い」の実現に向けては、例えば、市民・行政との意見交換や議員間討議を促進するためには、〈議会の「話し合い」〉について市民・行政による他者評価さらには議会(議員)による自己評価と見直し(改善)が必要になります。また、効果的に「話し合い」の力量を高めるためには、他議会における「話し合いの場」を視察することが有意義です。このようにして評価と見直しを継続してでき上がる優しいコミュニケーションは、柔らかな交渉力と確かな技術力を含んだ「話し合い」となり、議会と様々な主体や客体そして関係者をつなぎます。

議会は必置で合議制の議事機関であり、「話し合い(=合議)」とそのためのルールが必要

 議会について考えるとき、議会が地方自治法96条の規定に代表されるような議決事件の決定機関というだけでなく、議会が合議制の議事機関(憲法93条1項)であることを踏まえることが重要です。議会基本条例の嚆矢(こうし)である北海道栗山町議会基本条例の前文には、「議会は、その持てる権能を十分に駆使して、自治体事務の立案、決定、執行、評価における論点、争点を広く町民に明らかにする責務を有している。自由かっ達な討議をとおして、これら論点、争点を発見、公開することは討論の広場である議会の第一の使命である」と謳(うた)っています。このことは、議会の決定を含む様々な活動において、「話し合い(聴き合い・訊き合い)」が重要であることを浮かび上がらせているといえるでしょう。
 なお議会は、土山希美枝がいうように、自治体〈政策・制度〉を「必要不可欠」な範囲で、かつ、それぞれの〈政策・制度〉の効果が高いものであるように、「制御」する責務を持つ政策主体です(土山 2018:106)。議会が「必要不可欠」な範囲で、かつ効果が高いものであるかを決定するための合意形成には、「話し合い」が必要であり、そのためのルールが求められています。

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