2025.06.25 政策研究
第23回 「話し合い」のルールと合意形成
優しいコミュニケーションには「技能」「思い(パッション)」「自省利他」が求められる
優しいコミュニケーションには、「技能」だけではなく「思い」(パッション)と「自省利他」(自己中心性の自覚と払拭に努め(自省)、他者の安寧に資する行動を心がける(利他))が求められます。
「自省利他」について村田は、自分という存在は、他者との関係性から成り立っているのであり、他者との関係性を重んじる「気づき」が重要となっていると述べています。自分に欠けていることは何なのか? 自分のありようを省みることが自己変革につながるとし、これをコミュニケーションに当てはめれば、自身のコミュニケーションが話し手中心のコミュニケーションになっていないかを振り返り、コミュニケーションの相手への「思いやり」を大切にしようということであると述べています(村田 2023:201-202)。この「優しいコミュニケーションに向けての第一歩は、まずは、自身のコミュニケーションに意識を向けてみるということ」であるとする村田の考えは(村田 2023:201-202)、内省(自分の考えや行動などを深く省みること)の視点からも妥当であると考えられます。
「心地よく話し合い」「誤解されずに話し合う」ための環境とそのための心構え
「優しいコミュニケーション」を行うためには、自分が「心地よく話せる環境」「誤解されずに話せる環境」をつくることが必要になります。表2は、そのために必要となる心構えを示したものです。
出典:筆者作成
表2 「心地よく話し合い」「誤解されずに話し合う」ための心構え
例えば、自分や自分の支援者の考えに固執すると混乱に陥ることがあります。自分では理にかなっていると思っても、両立することが難しい宗教的・哲学的・道徳的な価値については、容易に同意することが難しいからです。
しかしながら、異なる諸価値を探りつつ漸進することは大切です。けれども、このような取組みは迂遠(うえん)とも見える実践であり、歩みが止まることもあります。私たちには、そのような中でも異なる諸価値を互いに尊重し合いながら、全方位的な「話し合い」を根気強く行っていくことが求められます。
