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2025.06.25 政策研究

第23回 「話し合い」のルールと合意形成

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元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄

 本稿では、「『話し合い』のルールと合意形成」と、これらに関する事項等について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。

「ポジティブなイメージで優しいコミュニケーション」と「ネガティブなイメージで冷たいコミュニケーション」

 コミュニケーションには、村田和代がいうように「ポジティブなイメージ」で「優しいコミュニケーション」(村田 2023:ⅰ)が求められます。では、「ポジティブなイメージ」で「優しいコミュニケーション」とは、どのようなものでしょうか。
 「ポジティブなイメージ」で「優しいコミュニケーション」は、人に勇気や元気を与え社会に良い影響をもたらします。そこでは、具体的には多様性や包摂性の重要性が重視されます。他方で、「ネガティブなイメージ」で「冷たい(=優しくない)コミュニケーション」は、人を傷つけ、扇動し、社会を間違った方向に動かす力を有します。そこでは、誤認による事件の発生や単一性・均質性・排他性による問題が起きてしまいます。

「話し合い」は「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」から成り立つ

 コミュニケーションでは、言語情報、聴覚情報、視覚情報が、7%、38%、55%のウエイトで影響を与えるという「メラビアンの法則」があります(プロの心理学ホームページ「メラビアンの法則」(https://pro-shinri.com/melavian-law/〔2025年6月3日確認〕)。「話し合い」は、言語情報を用いた「言語コミュニケーション」であると同時に、聴覚情報や視覚情報を用いた「非言語コミュニケーション」でもあります。すなわち、話し合いで効果を上げるためには、言語情報、聴覚情報、視覚情報を効果的に使用することが求められます。話すトーン・口調は聴覚情報であり、ボディランゲージ・表情は視覚情報の一つです。十分なコミュニケーションを図るためには、これらのことにも留意することが必要です(詳しくは、村田(2023:129-130)を参照)。
 そして、村田がいうように、災害等の危機管理コミュニケーションや平常時でもZoomを活用したオンラインコミュニケーションでは、いずれの場合も、実際には相手は目の前にはおらず直接優しさを伝えることが難しい状況となります。そのとき、聞き手が不特定多数である記者会見においても、画面に向かって話すオンラインコミュニケーションにおいても、聞き手(話し相手)のことを思いやる言語的なふるまいが大切になります(村田 2023:140)。

「社会的距離」と「親疎」を踏まえた「話し合い」

 相手によって話し方は変えることが必要です。例えば、〈保育園児・幼稚園児〉と〈保育士・幼稚園教諭〉の話し方と、〈園児の保護者〉と〈保育士・幼稚園教諭〉の話し方では、〈保育士・幼稚園教諭〉の話し方は変えることが必要です。また、一つの学年で見ても年度当初と年度末では、話し相手に関する情報が増え、話し方が変化していることが少なくないのではないでしょうか。このことは、市民と議会による議会報告会や意見交換会においても当てはまります。はじめはギクシャクしていた市民との話し方も、機会を重ねるごとに自然な話し方になります。
 このことに関して村田は、会話相手との人間関係の尺度として、二つの方向が考えられるとし、その方向として「上下」(社会的距離)と「親疎」(心理的距離)を挙げています。例えば、コミュニケーションを行う際、相手が目上であれば、敬語や丁寧な表現を用いるでしょう。しかし、目上であっても、親しい上司と、そうでない上司とでは、話し方を変えているのではないでしょうかと述べています(村田 2023:11)。
 「上下」(社会的距離)と「親疎」(心理的距離)については、議員間のコミュニケーションにおいても当てはまります。改選直後のコミュニケーションと1年後、2年後、3年後、4年後のコミュニケーションでは、後者の方が相手の情報・意思・気持ちを知ることができるでしょう。そのことにより相手との話し方も変わってきます。

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