2025.05.26 政策研究
第62回 経営性(その2):行政経営
行政経営の構成要素
行政経営とは、「新しさ」が重要なので、「改革」や「革新」と結合することがある。その場合には、「自治体改革」、「自治体革新」のみでも充分であろう。しかし、重要なことは、行政経営の中身あるいは構成要素として、何を念頭に置くかである。
例えば、過去官僚で外資系コンサルに転職、さらには、「大学教員」に転身して「学者」、「有識者」、「専門家」として、各地の自治体の顧問役の「先駆者」、「ロールモデル」である上山信一は、「行政評価」(3)の延長線上に「行政経営」を提唱した(4)。
また、例えば、滋賀大学で2019年度から開講されている「行政経営改革塾」では、以下のような構成要素が想定されている(5)。①総合計画と行政評価、②事務事業見直し、③地方公会計による財務分析(一般会計・公営企業会計)、④業務の棚卸しとBPR(業務改善)(6)、⑤DX推進計画、⑥補助金・負担金等歳出、⑦使用料・手数料等歳入、⑧公共施設等総合管理計画、⑨公営企業(水道事業など)、⑩指定管理者制度、⑪PFI(7)、⑫アウトソーシング、⑬中間支援(コミュニティ支援・協働支援)などが掲げられている。
様々に、その時々に改革するテーマ、すなわち、自治体行政改革の中身といってもよい。いうまでもなく、「行政改革」も同じように、概念それ自体では中身や構成要素は一義的ではないから、実際の項目から帰納するしかない(8)。
シンクタンクの関心事項
行政経営は、中身は可変的で、その時々の「改革」の関心や志向性によって、変動しうる。そこで、こうした流行を先取りし、変化に機動的に対応すると想定されるシンクタンクに注目して、行政経営の構成要素の不易流行を考えてみよう。シンクタンクには、様々なものがあるが、ここでは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「自治体経営改革」を取り上げよう(9)。
同社によれば、現時点(2025年5月現在)での自治体経営改革の領域は、①総合計画策定・マネジメントに関する支援、②市民等との協働・合意形成(コンセンサス・デザイン)に関する支援、③行政評価・EBPMの導入、改善に関する支援、④行政改革大綱・実行計画策定支援、⑤地方公共団体の組織・人事制度の改革に関する支援、⑥業務プロセス改善、アウトソーシング、市民協働など、行政サービス改革に関する支援、⑦地方公共団体の働き方改革支援、⑧その他地方自治体の経営改革全般に関する支援、と多岐にわたる。通常、総合計画、行政評価、行政改革、組織改革、人事制度改革、行政サービス改革、働き方改革などは、それぞれに独立した項目ともいえる。自治体経営又は行政経営とは、それらを包括する雑多な関心事項である。
同社は、独自調査として、2016年度より「自治体経営改革に関する実態調査」を毎年度実施している。全都道府県・市区を対象として、総合計画の策定と進行管理や市民参加、行財政運営の高度化に係るテーマなど、自治体経営の実態と課題に関する独自の実態調査を行っている。具体的な主要関心事項は、以下のようである。
●2023年度 ■総合計画 ■行政評価 ■総合計画策定における市民参加手法 ■エビデンスに基づく政策形成(EBPM) ■DX推進状況 ■SDGsの取組 ■公務員の人材確保・働
き方改革
●2022年度 ■総合計画 ■行政評価 ■総合計画策定における市民参加手法 ■エビデンスに基づく政策形成(EBPM) ■DX推進状況 ■SDGsの取組 ■新型コロナウイルス感
染症への対応策
●2021年度 ■総合計画 ■行政評価 ■総合計画策定における市民参加手法 ■エビデンスに基づく政策形成(EBPM) ■DX推進状況 ■SDGsの取組 ■新型コロナウイルス感
染症への対応策
●2020年度 ■総合計画 ■行政評価 ■総合計画策定における市民参加手法 ■成果連動型民間委託契約(Pay for Success、以下PFS) ■エビデンスに基づく政策形成
(EBPM) ■行政実務における先端テクノロジーの導入 ■SDGsの取組 ■国土強靱化地域計画の策定 ■新型コロナウイルス感染症への対応策
●2019年度 ■総合計画 ■行政評価 ■総合計画策定における市民参加手法 ■成果連動型民間委託契約(PFS) ■エビデンスに基づく政策形成(EBPM) ■行政実務における
先端テクノロジーの導入 ■SDGsの取組 ■人事評価制度
●2018年度 ■総合計画 ■行政評価 ■政策形成過程における市民参加の取組 ■ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB) ■成果報酬型指定管理者制度 ■エビデンスに基づ
く政策形成(EBPM) ■行政実務における先端テクノロジーの導入 ■SDGsの取組
●2017年度 ■総合計画 ■行政評価 ■ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB) ■成果報酬型指定管理者制度 ■総合計画策定における市民参加手法 ■エビデンスに基づく
政策形成(EBPM) ■働き方改革
●2016年度 ■総合計画 ■行政評価 ■ソーシャルインパクトボンド(SIB) ■成果報酬型指定管理者制度 ■政策形成過程における市民参加の取組 ■市町村合併