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2025.05.26 政策研究

第62回 経営性(その2):行政経営

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 今日の自治体では、「行政管理」と呼ぶことはあまりない。もちろん、前回触れたように、「行政管理」を銘打つ組織や活動が存在しないわけではない(1)。しかし、自治体組織全体にわたって行政管理といわれるよりは、むしろ、「行政経営」、「経営」などと呼ばれることが増えているようである。あるいは、自治体の「行政経営」、「経営」という意味で、「自治体経営」と呼ばれることも見られる。
 例えば、北から順に、青森県庁には総務部行政経営課、岩手県庁には総務部行政経営推進課、秋田県庁には総務部行政経営課、宮城県庁には総務部行政経営企画課、山形県庁には総務部行政経営企画課、福島県庁には総務部行政経営課、茨城県庁には総務部行政経営課、静岡県庁には総務部行政経営課などという名称が見られる(2)。行政経営の用語は、一般的・普遍的とまではいえないにせよ、都道府県レベルでは、それなりに広く見られるといえよう。
 「行政経営」も、時期により、地域により、ある意味で、何でも含みうる無内容な概念である。しばしば、旧来の「行政管理」に対して新しさを出すために、「行政経営」と改称している面がある。その意味では、決して新しい言葉ではない。「新しさ」をある時点で強調する言葉であり、すぐに陳腐化する。しかし、新しさを出す必要は、常に次々に生まれるから、「古くて新しい」言葉として再登場する。

東京多摩26市における「行政経営」

 市町村レベルでも、「行政経営」の名称は、見られないわけではない。また、組織名称ではなくとも、計画文書や活動に行政経営を冠することも多い。例えば、東京都における多摩26市についていえば、行政経営課を持つのは、府中市役所、小平市役所、東久留米市役所である。昭島市役所は企画部行政経営担当(課相当)、小金井市役所は企画財政部行政経営担当課長(課相当)という。調布市役所は行政経営部であり、庁議的なものが行政経営会議である。武蔵野市役所では、総合政策部に行政経営担当部長及び行政経営・自治推進課長が置かれている。
 もっとも、7市/26市であるから、「行政経営」が一般的というわけでは、全くない。東京都庁が「行政経営」と呼ばないことと関係しているのかもしれない。「経営」に広げれば、もう少し増える。八王子市役所の場合には、総合経営部経営計画課/経営改革課のように、「行政経営」ではなく端的に「経営」である。三鷹市役所・日野市役所では、企画部企画経営課である。国分寺市では政策部政策経営課である。町田市役所・国立市役所では政策経営部(政策経営課)、東村山市役所・清瀬市役所では経営政策部である。
 「経営」は、静態的・管理的な総務系よりも、動態的・運営的な企画系・政策系と結合する傾向も、うかがえる。上記のとおり行政経営課のある府中市役所/小平市役所/東久留米市役所であるが、同課は政策経営部/企画政策部/企画経営室に置かれている。逆に調布市役所は行政経営部であるが、その中に企画経営課が置かれている。行政管理部を持つ東大和市役所は、同時に政策経営部を持ち、経営と管理、及び、政策と行政、が対置されている。
 なお、立川市役所は前回(第61回)触れたように、行政管理部である。国立市役所・東大和市役所も同様である。多摩市役所は企画政策部に行政管理課がある。
 反対に、青梅市役所・福生市役所・狛江市役所・武蔵村山市役所・稲城市役所・羽村市役所・あきる野市役所のように、およそ、総務系にも企画系・政策系にも「行政経営」又は「経営」を使わないところもある。福生市役所/羽村市役所・西東京市役所では、せいぜい、企画財政部/企画部に公共施設マネジメント課で「マネジメント」が、施設管理(古い言葉では「管財」)に局限して使われている。ただし、総務部契約管財課が別途あるので、「管財」という従来型のあり方に対して、「新しさ」を「マネジメント」で表現しているのであろう。

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