2025.05.26 議会改革
【セミナーレポート】地方政策と議会改革を学ぶ研修会「官民連携の最前線と、議選監査の役割と活用法」
2025年5月9日(金)、ローカル・マニフェスト推進連盟主催で、「官民連携の最前線と、議選監査の役割と活用法」と題する研修会が開催されました。当日の様子をレポートいたします。
第1部 「無印良品との連携協定 ~『可児市立カニミライブ図書館』の可能性~」
開会の挨拶の後、1つ目の事例として、地域活性化へむけ各地の自治体と連携協定により様々な取り組みを展開する「無印良品」の官民連携事例として「可児市立カニミライブ図書館」の可能性について、木村 大輔氏(株式会社 良品計画 無印良品 銀座 総店長)より報告がありました。
誰もが知る「無印良品」を展開する株式会社良品計画は、岐阜県可児市と共同で地域商社を設立しました。市内のショッピングセンターの中にある無印良品の店内に市立図書館を設けるという国内で初めての取り組みについて、「感じ良い暮らしと社会」の実現を目指した事例であり、図書館は店舗部分との仕切りを設けず買い物ついでに立ち寄れる気軽さを追求し、料理本の隣に食品や調理器具を並べる、絵本の横に子ども服を並べるといった工夫や、ゲーム感覚で利用できるヘルスチェックコーナーを設けるなど、新たなコミュニティセンターとしての役割を果たし、まちづくりへとつながっていく様子が紹介されました。
第2部「そのDX、役人だけで出来ますか? ~オープンイノベーションによるDXの推進~」
次に、官民連携の2つ目の事例として、髙橋 晃氏(東京都町田市 政策経営部デジタル戦略室長)より、町田市のDXについての取組みの報告がありました。
政府のガバメントクラウドに先駆けてクラウドへの移行を進め、いち早く生成AIを職員・市民サービス向けに活用するなど、民間と積極的に連携しながらデジタル化を進めた町田市からの発表は、アバターやメタバースを活用した市の紹介動画の上映から始まりました。
基幹業務の標準化や手続のオンライン化を実現し、2024年4月に公開されたバーチャル市役所「まちドア」の紹介では、3Dアバターとチャットをするなどの実演も交えながら、分かりやすい言葉を使う、検索を簡単にするといったコンセプトの説明がありました。
その他、外部の3名の有識者によるデジタル化推進委員会や、生成AIの導入経緯などの紹介もあり、発表後の質疑応答では、初期費用や生成AIの正確性、また職員の業務量への影響についてなど、活発な質問が出ていました。
第3部「議選監査の役割と活用法~時代に対する自治体監査の進展~」
最後に、江藤 俊昭氏(大正大学地域創生学部公共政策学科教授 )をコーディネーターに、川上 文浩氏(岐阜県可児市議会議員、元議⾧、LM推進連盟共同代表)、子籠 敏人氏(東京都あきる野市議会議員、元議⾧、LM推進連盟共同代表)の2名による実践事例の発表がありました。
江藤氏からは冒頭に「議会改革が進んでいる中、監査委員の役割は強まっている。参加者には是非、議選監査委員がどのような役割を果たし、議会力アップにつなげていくか、そういう動きを押さえていただきながら、住民自治を進めていただきたい。」とコメントをいただき、いま問われている議選監査委員と議会についてその背景や、監査委員制度の特徴といった基礎的な知識などを整理されました。
川上氏からは「可児市監査委員の取組みについて」と題した発表がありました。監査方法の変遷を振り返りつつ、具体例を挙げながら議会と連携を取ることの重要性や、監査委員はかかりつけ医・主治医のような身近にいて頼りになる存在であり、職員を守る立場でもあることを語りました。また、可児市における定期監査の流れ・定期監査報告書や学校監査・リモート監査の実際の様子を示しつつ、現地に監査委員が赴くことによって、監査に対する緊張感が増したことや意識改革につながったこと、常任委員会との連携により所管事務調査が深化したこと、監査委員の行政に対する理解度が監査に大きく影響することなど、監査を充実させたことで得られた多くの結果を解説しました。
子籠氏からは、「議選監査の役割と活用法~東京都あきる野市の取組~」と題した発表が
ありました。監査のやり方は自治体によって千差万別であること、議員としての経験を生かして改善・取り入れられることを着実に提案・こなしていくことの効果、また全国の取組みを共有することで自治体監査や議会監査はもっと機能する、といった自身の経験から実感されたことを共有し、代表監査委員や議選監査委員がオンライン監査(リモート監査)を取り入れることの有用性を語りました。また、現体制で取り入れてきた多くの取組みから、監査の質を上げていくために監査計画の作り込みが重要であること、監査計画に記載した基本方針等を確認し合うことで意識統一をはかる新年度監査会議の実施、実効性を確保していくことを目的とした決算審査の工夫、学校監査実施の重要性などを解説しました。
発表後、会場参加者の多くの方から活発な質疑応答が行われ、江藤氏から「今や議会基本条例は千を超える議会で制定され、そこでは議会事務局の役割も脚光を浴びています。そういう意味では監査委員についても住民自治を進めるという意味で大事なことだと思います。」と締めくくりました。
会場参加者との集合写真