2025.05.26 まちづくり・地域づくり
第5回 大田原市新庁舎建設のコンセプト「庁舎は誰のために」
資金の手当てで特に注意をしたのは、「子供にツケをまわさない」ことです。市債の発行についても、後年度負担を極力少なくする資金調達を図り、7割が交付措置される震災復興債と合併特例債も活用しました。合併特例債については庁舎建設資金として使えるよう使途変更計画を申請し、20億円を調達しました。5億円の震災復興起債が認められました。公会計研究所の「市長貸借対照表」では、地方債を発行した際に、償還時に交付措置される金額を未収交付税として計上します。25億円の地方債が計上されますが、同時に17億5,000万円が未収交付税として資産に計上されます。

建設時資金の3億円は何とかしようと建設計画を進めていきました。市民生活重視、震災復旧・復興関連事業を最優先とし、他事業は圧縮・凍結しました。
市民にも我慢をしてもらいますので、まずは「戒は自ら」、市長は無論、三役の給与カットをはじめ庁内経費圧縮を実施しました。結果として、放射能除染を除き、復旧・復興が順調に進みました。
新庁舎のコンセプト
庁舎は誰のためにあるのか。当然、市民のためにつくられるものです。庁舎建設のコンセプトは、長く使うことができる災害に強い防災拠点となることです。建物を百年単位で使い続けることで、市民の負担は軽くなります。用途が変わっても使いやすい建築物にすることを目指しました。また、ワンストップサービスの向上を図り、各部署をまとめて動線を簡素化しました。そして、DX対応の行政を進めることとしました。
限られた敷地を有効活用するため、庁舎は議会棟を含めて1棟とし、市民の駐車スペースを確保する設計としました。また、那須与一にあやかって、団結の木であるイチョウと歩道を鏑矢(かぶらや)に見立て、庁舎は弓を張ったようなデザインにしました。
再び震災で庁舎が壊れることのないように、地下13メートルの岩盤層に50本のパイルを打ち込み、1階を重厚な鉄筋コンクリート造りとしました。1階と2階の柱の間に柱頭免振装置を設置することで、点検・維持管理のしやすい構造としました。2階から8階までは南面を鉄骨ガラス張り、側面をタイル張り、北面はガラス軽量コンクリートガルバリウム張りとし、軽量構造としました。
弓を張ったような形は卵型に近く、耐震性に優れた構造です。1階から4階までのフロアは同面積とし、5階から9階までのフロアは2割程度絞った面積として安定性を持たせました。重量的に見れば、2階以上が鉄骨、強化ガラス張り、内装は大天井を膜天井としました。この天井は、鉄筋コンクリート造りやボードの吊り天井構造と比べて非常に軽いため地震災害に強く、メンテナンスがしやすい、長寿命化された構造です。9階を機械室、8階をミニアート会場、市民展望室、議会傍聴席、7階を議会棟、6階から2階までを職員の事務室や市長室としました。