(5)高齢者向けのハンドブックの作成
ケアマネジャーのアンケート調査や意見交換会等の結果を受け、高齢者へ効果的な熱中症対策が図られるよう、高齢者をサポートする人が日頃の介護の際に活用しやすいハンドブックを作成した(図3)。
作成に当たっては、以下の点に配慮した。
- 伝えたいことをできるだけ絞って文字数を少なくし、図やイラストを数多く活用して、視覚に訴えることを第一に取り組んだ。
- 本市の特色をできるだけ少なくし、他の自治体でもそのまま活用できるようにした。
- チェックするポイントや現場でのアイデアを記載した。
- 電気料金を心配してエアコンの使用を控える高齢者に対して、熱中症による入院費とエアコンの電気料金との比較を示した。
- 行政が一方的に作成するのではなく、利用者の視点に配慮するために、アンケートフォームにリンクするQRコードを掲載し、利用者からの意見を取り入れるように工夫した。
図3 熱中症対策ハンドブック
(https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/669/20250121.pdf)
3 まとめ
本市では、上記の取組以外に温湿度計を活用した行動変容の調査、及び市域の詳細な気温等の変化の把握、毎年7月に市報の裏表紙を一面活用した啓発、自治会への回覧板の活用、公民館等の公共施設37か所にマイボトル用給水機の設置、指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)の指定、本市ホームページ・SNS等の様々なツールを活用した啓発等を実施している。
また、2025年はブラッシュアップした改訂版のハンドブックを関係者へ配布するとともに、外部との接点が少ない高齢者へのアプローチとして、宅配サービスを実施している企業や金融機関と連携した啓発も予定している。
暑さ指数(WBGT)の認知度や熱中症の知識、対策は少しずつ広がり、一定認識はされているものの、自分事として捉えている人はまだまだ少なく、また夏期の気温上昇も加わって救急搬送者数は増加傾向にある。
本市のこれまでの調査において、未就学児は児童部局、小中学生等は教育委員会、労働者は労働部局、高齢者は高齢福祉部局、スポーツ実施者はスポーツ部局、その他環境部局、消防部局、健康医療部局等多くの部局が独自に熱中症対策の啓発や情報発信を行っているとともに、特に啓発ツールの作成に力点が置かれた施策も散見される。そのため、啓発ツール作成に注力するよりも、環境省が関係省庁と連携して作成した啓発ツールを活用することで、効率的かつ効果的で統一感も出るとともに、同じ内容で毎夏に使用することで印象に残ることから、本市では2023年からこの啓発ツールを継続して活用している(図4)。
4 おわりに
例年、夏が過ぎれば暑さを忘れてしまいがちだが、猛暑は今年もやってくる。熱中症対策は「待ったなし」の状態である。本市では引き続き、効果的な情報発信や啓発活動、関係機関との情報共有を行うとともに、調査・研究の取組も進める。
熱中症対策に市域境界はないため、これまでの知見、ノウハウを市独自のものとせず水平展開を図り、本市だけでなく全国においても熱中症による救急搬送者を一人でも減らせるよう取り組んでいく。