(3)高齢者を取り巻く関係性の整理
高齢者に対して熱中症対策をより効果的に啓発することを目的に、関係者から意見聴取し、高齢者を取り巻く関係性を整理した(図2)。
(4)ケアマネジャーとの連携
高齢者と普段から接する人からの見守り・声かけの効果等を確認するために、ケアマネジャーの協力の下、以下の三つの取組を実施した。
ア 熱中症対策の講習会
ケアマネジャー(参加者数89人)を対象に、熱中症対策の現状と課題、効果的な熱中症対策、高齢者の熱中症に係る基礎知識、見守り機能の重要性等について講習会を実施した。
参加者からは、「高齢者の熱中症対策に係る知識や効果的な対策が理解できた」、「介護現場で活かしたい」等の感想をいただいた。また、エアコンの使用を拒否する高齢者への働きかけや、認知症の高齢者への熱中症対策について課題があるとの意見もいただいた。
イ 高齢者の住環境や暑熱対策の実態調査
ケアマネジャーの協力の下、2種類のアンケート調査を実施した。
ケアマネジャーの業務等に関する調査結果(回答数139件)から、居宅介護支援を受ける高齢者の熱中症による救急搬送者数の割合は、居宅介護支援非対象者に比べて非常に高い割合となった。
発症状況としては、「エアコンを設置していたが使用していなかった」、「独居で見守る家族等がいなかった」との回答が数多くあった。
ケアマネジャーが担当する高齢者の熱中症に係る生活実態調査結果(回答数1,504件)から、以下のことが判明した。
- 見守り状況については、配偶者等の同居人がいる高齢者が約60%、独居の高齢者が約40%である。約75%の高齢者が何かしらの形で見守りの体制を構築していた一方で、約25%の高齢者は見守りの体制がない状況であった。
- 熱中症警戒アラートの認知度については、約半数が「アラートの存在を初めて知った」との回答であった。情報の入手方法としては「テレビ」が最も多く、次いで「家族からの声かけ」、「ケアマネジャー・ヘルパーからの声かけ」の順になっていた。
- エアコンについては、約97%が設置し、約90%が日常的に使用していたが、使用に当たっては約70%が温湿度計ではなく体感で判断していた。
- 就寝時のエアコン利用について、約60%が「つけたまま寝る」と回答した一方、約20%が「エアコンをつけたまま寝ることはない」との回答であった。
ウ ケアマネジャーとの意見交換会
日頃から高齢者に接しているケアマネジャー(15人)からの現場の声を聴取するため、意見交換会を実施した。
この結果、高齢者に対して効果的な対策を実施するに当たって、数多くの貴重な意見をいただいた。
主な意見を以下に示す。
- 暑さに対する危機意識が低く、介護支援者がエアコンをつけても本人がすぐに切ってしまったり、夏でもセーターを着たりストーブをつけたりする等、暑さを感じていない。
- 電気料金を心配してエアコンの使用を控える人が数多くいる。
- 認知症が少し進んだ高齢者は、エアコンを切ってしまわないようにリモコンを隠しても、探し出して切ってしまうことがある。
- リモコン操作の際に誤って暖房スイッチを押してしまうことが数多くある。
- 啓発ツールを郵送で高齢者宅に送っても見ないため、介護支援者が熱中症対策を正しく理解し、高齢者に説明する方が効果的である。
- A4サイズの啓発ツールは他の紙資料と紛れてしまうため、冷蔵庫に貼れるようなA5サイズにすれば捨てられにくい。
- 自治会への回覧板の活用も効果的である。
- 公民館行事やふれあい交流サロン等に参加しない高齢者、特に独居(一軒家)で外部との接点が少ない高齢者が心配である。