2 熱中症対策の取組
本市は熱中症による救急搬送者数を一人でも減らすために、2019年から環境省の熱中症対策に関するモデル事業に継続して採択され、熱中症リスクが高い高齢者等への啓発及び様々な関係者へのヒアリング、アンケート調査等を実施した。これらの取組結果について以下に示す。
(1)熱中症による救急搬送者の分析
本市消防部局から熱中症による救急搬送者データを入手し、詳細に分析を実施した(表)。
分析結果からは、救急搬送者の約半数を高齢者が占めており、入院を要する中等症以上の高齢者の割合は約70%であり、高齢者は重症化しやすいことが判明した。
また、中学校区別に集計すると、万博記念公園を有する校区での救急搬送が全体の約30%を占めているほか、二つの校区では運動部の活動が盛んな私立学校があり、他の校区に比べて12歳から22歳までの学生が数多く救急搬送されていることから、重点的な対策の必要性が示唆された。
(2)プラットフォーム会議
熱中症による救急搬送者の分析結果から、熱中症リスクが高い対象を「教育機関」、「万博記念公園等の運動施設」、「高齢者」の三つに設定し、関係者が意見交換をするプラットフォーム会議を毎年継続して開催している。これらの概要について以下に示す。
ア 教育機関のプラットフォーム会議
市内の大学及び高校、本市のスポーツ推進部局、教育委員会のメンバー等が参加し、意見交換を行った。この結果、以下のことが判明した。
- 学生に対する啓発ツールは紙媒体ではなく、スマートフォンを活用した動画等が望ましいこと。
- 指導者を対象とした暑さ対策の啓発ツールも必要であること。
- 熱中症に配慮しつつ、パフォーマンスの向上につながる啓発が必要であること。
イ 運動施設のプラットフォーム会議
市内の公園管理及び本市のスポーツ施設を所管している部局のメンバー等が参加し、意見交換を行った。この結果、以下のことが判明した。
- 運動施設の利用者に向けては、暑さ指数(WBGT)の普及啓発等を実施していく必要があること。
- 暑さ指数(WBGT)上昇による活動の一律停止の対応は避け、個人利用や団体利用・競技種目等、様々な運動施設利用者に応じた対応を考える必要があること。
- 市の施設では暑い時間帯は活動を避けるよう利用者へ周知するとともに、市が主催等するスポーツ大会は8月を避け、7月・9月に開催するように各スポーツ団体へ周知していること。
ウ 高齢者のプラットフォーム会議
市内の社会福祉協議会及び病院、高齢者生きがい活動センター、本市の高齢福祉部局のメンバー等が参加し、意見交換を行った。この結果、以下のことが判明した。
- 通気性のよい服を着る習慣が浸透していないこと。
- 高齢者の年齢や生活状況等に応じて啓発方法を変える工夫が必要であること。
- 高齢者向けの啓発ツールは、電子媒体ではなく紙媒体の方が効果的であること。
- 啓発ツールについては、内容を盛り込みすぎて字が小さくなると読まないことや、ポイントを絞って的確に伝えた方が効果的であること。
- 年金支給日(偶数月の15日)に金融機関を利用するため、そのときに啓発すると効果的であること。
- 高齢者と普段から接する周囲の人からの見守り・声かけが重要であること。
- ケアマネジャーをはじめ介護支援者に対して、熱中症の啓発を行うことも重要であること。