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特集 猛暑を乗り切る!―熱中症対策の現状と課題―

2025.05.12 政策研究

熱中症の現状と国及び地方公共団体の熱中症対策

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3 政府や地方公共団体による熱中症対策

 熱中症による健康被害を軽減するために、政府や地方公共団体により様々な取組が実施されています。以下では、主な取組を紹介します。

(1)政府
ア 熱中症警戒アラート
 従前、気象庁の高温注意情報や、環境省の暑さ指数(WBGT:気温に加え、湿度や日射等も考慮した指標)の発信等によって、政府は熱中症に対する注意を国民に呼びかけてきました。2020年からは、環境省と気象庁が連携し、熱中症警戒アラート(以下「アラート」といいます)と呼ばれる取組を開始しました(8)。この取組では、WBGTがアラートの発表基準として採用され、翌日もしくは当日にWBGTが33以上になると予測された場合に、府県予報区単位でアラートが発表されます。日本全国で発表されたアラート総数は、2021年に613件、2022年に889件、2023年に1,232件、2024年には最多となる1,722件となりました(9)

イ 熱中症特別警戒アラートと指定暑熱避難施設
 政府は、熱中症に係る政府の重点対策をまとめた熱中症対策行動計画(2021年3月策定、2022年4月改定)を、2023年5月に熱中症対策実行計画(以下「実行計画」といいます)として法定の閣議決定計画に格上げしました(10)。この実行計画では、中長期的な目標(2030年)として熱中症による死亡者数を現状から半減することが掲げられています。また、この実行計画に基づき、災害級の熱波に備えるための熱中症特別警戒アラート(以下「特別アラート」といいます)が2024年4月に開始されました(11)。この取組では、各都道府県内の全ての地点でWBGTが35以上になると予想された場合に、都道府県内単位で特別アラートが発表されます。また併せて、市町村長が地域における指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を指定し、特別アラートが発表された際に開放することが義務化されました(12)。なお、2024年には特別アラートの発表はありませんでした。

ウ 職場における熱中症対策の義務化
 職場における熱中症による死亡災害が多発している中、そのほとんどが初期症状の放置・対応の遅れであることが指摘されています。熱中症により労働者が死亡に至らない(重篤化させない)ようにするために、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じて迅速かつ適切に対処するための「体制整備」、「重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」、「関係作業者への周知」を罰則付きで事業者に義務付ける取組が2025年6月に施行される予定です(13)

(2)地方公共団体
ア 地域気候変動適応計画
 政府、地方公共団体、事業者、市民が連携・協力して適応策を推進するための法的枠組みを定めた気候変動適応法が2018年12月に政府により施行されました(14)。この法律によると、地方公共団体が地域気候変動適応計画(以下「地域適応計画」といいます)を策定することが努力義務となっています。都道府県レベルで見ると既にその全てで地域適応計画が策定されています(15)。これらの地域適応計画を見ると、熱中症に関する対策として、ウェブサイトやパンフレットによる熱中症リスク低減のための普及啓発や、エアコンの設置や適切な利用といった対策が多く見られます。熱中症による健康被害が高止まりしている中、熱中症に関する地域特性を把握の上、その実情に基づいた対策の計画・導入が求められます。

イ ヒートアイランド対策
 都市部では、ヒートアイランドによる気温上昇も生じています。ヒートアイランドの発生は、空調等からの人工排熱の増加、地表面の改変(アスファルト化等)、都市構造の複雑化等に起因します(16)。地方公共団体は、ヒートアイランドによる気温上昇を低減するために、都市緑化の推進や、風の通り道の確保等、様々な対策を導入しています(17)。このようなヒートアイランド対策も、熱中症リスク低減のための重要な対策といえます。ヒートアイランド対策が地域適応計画に含まれるケースも多く見られます(18)

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