2 深刻化する熱中症
このような気温上昇による影響の一つに熱中症を挙げることができます。熱中症とは、高温多湿な環境にいることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりすることで、体温が上昇し、めまいやけいれん、頭痛等を発症する障害の総称です(3)。
総務省消防庁の統計(4)によると、年により増減はあるものの、熱中症による救急搬送が年間6万5,000件程度発生しています(図2)。最も暑い夏であった2024年には、調査が開始された2008年以降で最も多い9万7,578件を記録しました。2024年の救急搬送を年齢区分別に見ると、高齢者(満65歳以上)が57.4%と最も多く、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)が33.0%、少年(満7歳以上満18歳未満)が9.0%、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)が0.6%となっています(図3)。最も割合の高い高齢者が熱中症になりやすい原因として、呼吸・循環系の機能低下により暑さに脆弱(ぜいじゃく)であることや、暑さを感じにくく熱中症を発症しやすいといった要因、またエアコン利用を好まない等の要因が挙げられます。発生場所別に見ると、住居が38.0%と最も多く、次いで道路が19.0%、公衆(屋外)が13.0%となっています(図4)。住居での熱中症が多い原因として、高温な室内状況であってもエアコンを利用しない等が要因として挙げられます。
注:2010~2014年及び2020年は5月のデータがないことに留意。
出典:総務省消防庁の統計(4)を基に国立環境研究所が作成
図2 熱中症救急搬送数の推移

出典:総務省消防庁の統計(4)を基に国立環境研究所が作成
図3 熱中症救急搬送の年齢区分別割合(2024年)

注:仕事場①は道路工事現場、工場、作業所等を、仕事場②は田畑、森林、海、川等(ただし、農・畜・水産作業を行っている場合のみ)を含む。
出典:総務省消防庁の統計(4)を基に国立環境研究所が作成
図4 熱中症救急搬送の発生場所別割合(2024年)