2025.04.25 New! 政策研究
第61回 経営性(その1):行政管理
POSDCoRBとしての行政管理
1930年代頃に成立したアメリカ正統派行政学では、政府部門のような大きな組織を運営するときに、行政の最高責任者(大統領(president)・知事(governor)・市支配人(city manager)など)を支える行政管理(administrative management)の機能があるとされてきた。しばしば、その頭文字をとって、POSDCoRBと呼ぶ。具体的には、企画(planning)、機構(organizing)、人事(staffing)、指揮監督(directing)、調整(coördinating)、文書・報告(reporting)、予算(budgeting)である。
行政の最高責任者は、POSDCoRBの機能を果たさなければならないが、一人の人間でそれを全て行うことはできないので、最高責任者(top)の最高経営(top management)を支える補佐機能が必要ということになる。そのような補佐機能は、少なくとも当時においてはほとんど機械化・電算化されていなかったので、しばしば、機構あるいは人員として、さらにそれらを可能にするために予算として、具体化されることになる。もっといえば、仮に生成AI化されるとしても、それを導入するための様々な作業には基盤整備が必要であり、最高責任者が一人ではできないから、結局、機構あるいは人員・予算として表現されることになる。その意味で、POSDCoRBの各要素の中でも、相互に相互を支援する面もある。
日本の自治体では、行政管理を担う機構として、官房・総務系部署が、「総務課」、「総務部」や「市長公室」というような名称で形成される。さらに、そのような官房・総務系部署が拡大していけば、機構自体が拡大して、課から部、部から局へと「昇格」していくとともに、内部で部課係に分化する。それとともに、複数の官房・総務系部署に分割していくこともある。例えば、「総務部」、「企画調整部」、「財政部」のように三つの官房・総務系の部に分化したりする。POSDCoRBとして見れば、その名のとおり、企画調整はPとCo、財政はBであることは予想がつく。残りの「総務部」というのが、未分化状態にある残りのOSDRを担うことになり、例えば、人事(S)・機構(O)・文書(R)などを所掌していることになる。
このように、日本の自治体の行政管理は、POSDCoRBに類似しているともいえるが、日本的な特質を持っているともいえよう。そもそも、日本語でいう「行政管理」は、アメリカでいうPOSDCoRBよりも、あるいは、日本語でいう官房・総務系よりも、狭い範囲になっているのが普通である。国レベルで「行政管理」というのは、旧行政管理庁の所掌事務であり、さらに狭く、総務省(旧行政管理庁・旧総務庁)行政管理局の所掌事務に限定されている。実質的には定員・機構の制度管理に限定されているので、この点も注意が必要である。