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2025.04.25 New! 政策研究

第21回 政治と議会・議員

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「政治と議会・議員」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 根本経験や姿勢を貫く人生経験は、政治家(議員・首長)にとって大切です。
  2. 政治には、市民のための問題解決が求められています。
  3. “勇気”と“誠実さ”が地域を変え、やがて政治(例えば、議会運営)も変えていきます。
  4. 議員間の議論は熟議であることが大切です。
  5. 熟議には、「記録と記憶の継承」も必要です。記録と記憶の両方の継承があれば予見可能性が高まります。
  6. 「記録の継承」のためには、文書の作成・保存・管理・公表(公開、提供)が必要です。「記憶の継承」のためには、出来事のトピックを継続的・定期的に公表することも求められます。そのためには、記録と記憶を習慣化することが大切です。
  7. 記録と記憶の継承には留意すべき事項があります。一つは、被害を受けたという記録だけでなく、加害をしてしまった歴史も記録し公表しなければならないということです。二つ目は、記録に間違いがあったり、新たな事実が発見されたり生じた場合には、それらの事柄について記録し公表しなければならないということです。
  8. 〈「記録のない(ないし公表されない)」話し合い〉には、重要性と危険性があることを示唆しています。
  9. 議員には、教訓を活かして社会を変えることが大切であり、その前提として「空気(=マインド)」を変えていくことが求められています。
  10. 「自己責任論は強者の理論」であり、自己責任論をポジティブにとらえることはできません。
  11. 市民誰もが持つ「無知のヴェール」を考慮する自治体は、政策の数字(政策指標・財政指標や目標値・評価値など)だけを見ているのではなく、市民(特に困窮者)の顔や心を見ています。
  12. 自治体議会には議員個々の特長を踏まえながら、全議員がネットワークを結び、議員の能力を上手に活かす心と技が必要となります。
  13. 完璧で永続的な制度はありえないと考えることが大切です。そして、一定の期間ごとに、あるいは社会(ニーズ)の変容に合わせて「制度」「組織」を見直す必要があります。
  14. 選挙により政治全体のパフォーマンスが上がることが期待されています。
  15. 民意には「集約と反映」の両立困難性があります。
  16. 議会そして議員には内省と試行錯誤を繰り返しながら思慮深く考え行動することが求められています。
  17. 「SNS活用力」「対話力」の向上は「合意形成力の向上」につながります。
  18. マニフェストを作成する前段で、より広く地域性のある(既存政党ではマニフェストのアジェンダに乗ってこない)政策も議論できる「対話(話し合い)の場」をつくり、選挙期間中もマニフェストの内容を広げ深める「対話の場」をつくることが必要となります。
  19. 熱心な活動とリラックスすることが、良質な議会議員活動につながります。
  20. 議員に求められるのは、ファクトと論理を尊重し、推論することです。
  21. 政治家には、市民との共通体験があると、地域の実情が分かりやすくなります。
  22. 豊かな社会を築くためには、まず相互学習を共通体験することが一つの方法です。
  23. 議員の「大量卒業」や有能なリーダーが引退しても、議会は十分な機能を発揮できるような力を組織全体で蓄えていることが必要です。
  24. 「いとしい地域を持続可能にしたいなら、毎日、地域をいとおしむことが必要」です。ここで「いとおしむこと」の「こと」とは、「考える・話し合う・行動する」という意味です。
  25. 「議会力」と「議員力」の関係は、一方がレベルアップすれば他方もレベルアップするという関係にあります。
  26. レベルダウンを避けるためには、二つのことが重要です。一つは、自治体機構(議会・行政)を自律(相互)制御するとともに、市民等による他律制御の仕組みをつくり実践することです。いま一つは、総合計画の有用性を認識し活用することです。
  27. 議員には、必要なときにタイミングを失せずに、自らの「心」と「技」を機能をさせることが重要です。
  28. 政治は、①支配・権力や利益を追求して争う面と②社会全体や人々に貢献する面という両義性を持ちます。さらに、今日の政治では、②の一部ですが、価値や資源の総量を増やし活用するプラスサム(「ウィン・ウィン」)の政策を見つけ、人々の協力や妥協を促す政治も大切になります。
  29. 自治体ガバナンス(=自治体の統治=自治体の自治)には、「当該自治体エリアにおける自己反省機能」を持っていることが重要となります。そこでは、全ての事象は多面的であり、二者択一ではないという認識が不可欠です。多面的なものを二者択一で決めようとするところに問題(=「決定の限界」)が生じます。二者択一で決するときには工夫が必要です。


■参考文献
◇石破茂=神山典士(2023)『「我がまち」からの地方創生』平凡社
◇岸本聡子(2023)『地域主権という希望─欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦』大月書店
◇趙星銀(2017)『「大衆」と「市民」の戦後思想 藤田省三と松下圭一』岩波書店
◇エドマンド・バーク著、二木麻里訳(2020[原著1790])『フランス革命についての省察』光文社
◇保阪正康(2021)『石橋湛山の65日』東洋経済新報社
◇村上弘(2024)『日本政治ガイドブック〈全訂第3版〉─教養の政治学』法律文化社

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