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2025.03.25 政策研究

第60回 組織性(その6):目的なき組織

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おわりに

  自治体は共通目的がなくても存在する。相互予測に基づく相互連結行動サイクルによって、資源循環・変数再生産がされていれば存続する。しかし、ときには、各人の行動を説明するように、意味が作成されることがある。それは共通目的のこともあれば、それに基づく目的手段連鎖の階層構造のこともあろう。有意味化された環境又は因果マップが与えられると、自治体という相互連結行動サイクルの集積は、全体として組織化されていく。いわば、有機体としての組織として立ち上がってくる。ただし、それは、常に淘汰・保持の進行にさらされ、目的なき行動になることもある。とはいえ、新たな共通目的から行動が生まれるというよりは、行動から共通目的が構築されていく(ことがある)。 
 自治体に因果マップを与えるのが、首長などのビジョン・施政方針・マニフェスト、総合計画・戦略計画、「○○らしさ」を語る自治体史あるいは自己認識などである。いわば、「まちづくり」ではなく「いみづくり」である。しばしば、共通目的を設定するのは、理事者の役割である。もちろん、自治体組織には、こうした共通目的はなくてもよい。例えば、実際、市町村が合併した翌日から業務ができるのは、自治体の本質は相互連結行動サイクルの集積だからである。合併した自治体には、しばしば、一体性・アイデンティティもない。もちろん、合併自治体建設計画があり、それが共通目的と意味を付与することもあるが、しばしば、合併自体の成就が自己目的の因果マップであり、合併後自治体の因果マップではないものである。
 

(1) 金井利之=自治体学会編『自治体と総合性』(公人の友社、2024年)。 
(2) 明治体制では、まさに府県知事は、国から任命されて、府県の事務を支配することを求められていたので、「知事」と呼ぶにふさわしい。戦後改革を経ても、なお、名称が変わらなかったのは、興味深いところである。実際、知事への機関委任事務制度がつくられた。さらに、機関委任事務制度の廃止を行った2000年改革を経ても、知事の名称は変わらなかった。市区町村では「市区町村長」と呼ばれるのであれば、「都道府県長」と改称されても不思議ではないが、そうはなっていない。アメリカの州の執政首長が、慣例的に「知事」と呼ばれていることが影響しているのかもしれない。 
(3) カール・E・ワイク、遠田雄志訳『組織化の社会心理学〈第2版〉』(文眞堂、1997年)、同、遠田雄志=西本直人訳『センスメーキング イン オーガニゼーションズ』(文眞堂、2001年)。以下、主に、高橋伸夫『組織の思想史─知的探究のマイルストーン』(日本経済新聞出版、2025年)第6章の解釈を参照した。ワイクの組織化理論は極めて難解だからである。また、翻訳者である遠田雄志「けったいな!―カール・ワイクの世界(2)」経営志林35巻4号(1999年)43~50頁の「縁・因・果・報」や、「ポスト・モダン経営学」組織科学Vol.29 No.4(1996年)30~37頁という解釈も興味深い。 
 なお、危機や想定外に関する、カール・E・ワイク=キャスリーン・M・サトクリフ、中西晶監訳、杉原大輔ほか高信頼性組織研究会訳『想定外のマネジメント〈第3版〉─高信頼性組織とは何か』(文眞堂、2017年)、同、西村行功訳『不確実性のマネジメント─危機を事前に防ぐマインドとシステムを構築する』(ダイヤモンド社、2002年)も示唆的であるが、今回は取り上げない。
 

 

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