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2025.03.25 政策研究

第60回 組織性(その6):目的なき組織

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組織化と共通目的

 相互連結行動サイクルから組織化がなされる因果回路を、ワイクは設定する。一種の進化論のアナロジーで、
 ① 生態学的変化 
 ② イナクトメント(働き掛け) 
 ③ 淘汰(とうた) 
 ④ 保持 
の4要素とされる(図)。 

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出典:カール・E・ワイク(1997)より作成

 図

 
 ①とは、何らかの変化が環境で生じたときである。相互連結行動サイクルが「無為自然」に安定していれば、相互連結行動サイクルに関わる個人は、特段に何もすることはない。 
 そこで、②として、環境に対して「イナクトメント(enactment)」(高橋伸夫は「環境有意味化」としているが、遠田雄志は「イナクトメント」のままである)する。意味作成(sense-making)と呼ぶこともできる。政府部門の用語でいえば、「イナクトメント」は「法律(act)」を制定すること、立法することである。立法あるいは政策立案である。もっとも、すでに相互連結行動サイクル自体は存在しているから、立法・政策立案によって、環境への相互連結行動に一定の目的や趣旨を設定することである。しかし、立法・政策は、通常は環境に対して執行されるので、実際に①を変化させることも含む。単に、認識や意味付けの世界だけで働き掛ける話ではない。
 もっとも、政府部門での立法・政策立案は、通常は特定の政策領域に限られ、政府(国や自治体)という組織全体の共通目的ではない。とはいえ、公式の立法・政策立案がされれば、当該所管部署以外の部署も、公然とはそれに反することはできない。
 ③組織が、環境に働き掛ける(イナクトメントする)からといって、その全てが妥当であるとは限らない。有意味化された環境は、変数間関係を示した因果マップとして表現される。しかし、その因果マップ又は意味作成が、相互連結行動サイクルの安定に寄与しないときには、淘汰される。あるいは、あまり有意味ではない生態学的変化を引き起こしてしまうこともある。自治体を含む政府組織でいえば、政策や立法で役に立たないものは、明示的に改正廃止されるか、執行を懈怠(けたい)・放置・留保される。
 ④淘汰に生き残った因果マップは、保持される。このときに組織は、環境に働き掛けをしながら、もっともらしい意味を持つことになる。
 いわゆる組織の中には、相互連結行動サイクルがたくさんあるので、イナクトメント(E)、淘汰(S)、保持(R)というESR連鎖が多数存在する。相互連結行動サイクルを集積させるには、保持された安定した部分が重要である。つまり、淘汰を生き残った政策立案・立法の集積が、自治体の組織化なのである。雑多な目的が乱立し、そもそも、多くの行動においては目的が消失している自治体において、既存の政策・立法などをもとに、意味が作成されていく。それは、相互連結行動サイクルの前に設定されるのではなく、相互連結行動サイクルの集積から、一部の要素を抽出して、後知恵的・回顧的に設定される。それによって、アイデンティティ構築(「○○らしさ」)につながる。正確ではなくても、もっともらしければよい。社会の中で進行するものである。 

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